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10年後、君に仕事はあるのか?
【第12回】 2017年3月28日
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藤原和博

「未来を生き抜く子ども」を育てるたった3つの考え方

AIの台頭や一層のグローバル化、就活の地殻変動などの影響で到来する「仕事が消滅する時代」。そんな時代に向けて必要な「子育て」とは?「高校生に語りかける」形式が読みやすいと保護者からも話題になっている教育改革実践家・藤原和博氏の最新刊『10年後、君に仕事はあるのか?』の内容から一部抜粋してご紹介する、連載第12回。

学校の支配が弱まっていく

 これまでの学校の主な機能は、国が決めた「国民に必要な知識」を教科に分けて年間1000コマ程度の「一斉授業」で教え込むことでした。でも、この機能はこれからオンラインでの学習が普及することに加え、次のような理由から自然に弱まっていきます。

 現在の学校は、学習指導と生徒指導の双方で豊富な経験を持つ50代のベテラン教員によって支えられているのですが(どんな自治体でもだいたい全体の35%)、このままだと皆10年以内に退職していなくなります。

 団塊世代の大量採用の反動で30~40代の層が薄いので、とくに都市部では慌てて20代の新規採用教員を増やしています。ところが、教員の人気は景気がいいと下がるので応募採用倍率が下がり、質が維持できていないのが現状です。ちなみに、これは教職課程の教授がサボっているからではないし、若手の先生が悪いのでもない。構造的な問題なのです。

 東京での小学校の先生の応募採用倍率はひと昔前まで15倍はありましたが、いまや2~3倍以下です。家庭や地域社会の教育力の低下に加えて、ついに学校の教育力が否が応でも低下する時代に入ったということになります。

 これは、君たちが学校的な価値観、すなわち「正解主義」「前例主義」「事なかれ主義」から、だんだん解放されていくことを意味します。

 「正解主義」とは、正解以外を弾いてしまう行動様式のことを指します。これは、正解を教えるのが学校だという勘違いから生じています。もともと学校は、人間を標準化する機能を持っているので、標準化への反発から教室崩壊が起こるのは無理もないところがあるんです。

 君だって一斉授業で正解のみを教えられることで、物事には何でも正解があるように勘違いしちゃってるかもしれない。本当は「修正主義」で、まず決めちゃってからドンドン改善していけばいいんだけどね。

 「前例主義」とは、前例がないものには取り組まない行動様式のこと。君たちが「学校の校則をこういうふうに改善したい!」って提案したとき、それが明らかにいいものだったとしても、なかなか認められないでしょ。本当は「先例主義」で、それぞれの学校が校長のイニシアチブで自ら良い先例を作り、同じ地域の学校に普及させていければいいんだけどね。ひいては全国にも。

 「事なかれ主義」とは、何事にも支障がないように、できるだけことを荒立てないことを善とする行動様式のこと。いじめや暴力や痴漢行為が学内で起こったとき、よく学校や教育委員会はそれを隠そうとするでしょ。それがあとから内部告発などでバレてマスコミにバッシングされてますよね。そういう体質がはびこっちゃってる面はたしかにあるんです。

 ただし、これは保護者や地域社会のほうにも責任はあって、「学校では、どんな間違いも起こしてはいけない」という正解主義ムードが周囲に漂っていると、学校はそれに順応して、間違いを起こさないようにするものなんです。

 本来、教育機関としての学校では、いろんな失敗があっていいし、試行錯誤を通じてしか君たちも成長しないでしょう。逆上がりや跳び箱でも、何度も失敗を繰り返してできるようになるわけで、ケガする可能性もあるような、ちょっと危ないこともしなければ、教育の場ではなくなってしまいます。

 僕は、学校に対して保護者があまりにも「学校では間違いは起こらないはずだ」というキャンペーンをはると、そのうち科学の実験で火を使うことがなくなるし、家庭科の包丁も危ないということになるし、怪我をするからと校庭から鉄棒がなくなる日も来るんじゃないかと警告しているんです。これ、笑い事じゃないんだよね。

 だから、学校を教育の場として維持したいんだったら、むしろ「事あれ主義」でなければいけない。いろんなことが起こるのを前提に、その事象を機会と捉えて生徒と先生が一緒に学んで成長できる場としてです。

 もちろん、事件や事故は起こらないほうがいいけれど、予定不調和のイベントや想定外の物事は、どんどん起こったほうが君だって楽しいでしょ。

 「正解主義」「前例主義」「事なかれ主義」から解放されるにつれて、個人の思考力・判断力・表現力が伸びていく余地が出てきます。僕はそのことを前向きに捉え、君たちの可能性が開かれるチャンスだと考えているのです。

 だから、遠慮なく「修正主義」「先例主義」「事あれ主義」で生きてほしいと、僕は君たちにエールを贈り続けたいと思います。

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藤原和博(ふじはら かずひろ)

教育改革実践家。奈良市立一条高等学校校長。元リクルート社フェロー。1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。2008年~2011年、橋下大阪府知事の特別顧問。2014年から佐賀県武雄市特別顧問。2016年、奈良市立一条高等学校校長に就任。 『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(いずれも、筑摩書房)など人生の教科書シリーズ、『35歳の教科書』(幻冬舎)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)など著書多数。

 


10年後、君に仕事はあるのか?

近い将来、AIの台頭や一層のグローバル化、就活の地殻変動などの影響で到来する「仕事が消滅する時代」。そんな時代に必要とされるのが、「雇われる力」(エンプロイアビリティ)だ。 本連載では、教育改革実践家である藤原和博氏の最新刊『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)の内容をもとに、2020年代の近未来を生き抜くための「雇われる力」の身につけ方をお伝えする。若手ビジネスパーソンや中高生の子どもを持つ保護者には、ぜひ一読していただきたい内容だ。

「10年後、君に仕事はあるのか?」

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