ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第5回】 2011年5月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

不安の正体は原発問題。
いま「原発鬱」とも呼ぶべき症状が増加している

1
nextpage

原発事故によるこころのダメージは、
チェルノブイリよりも日本のほうが大きい

 1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故から、奇しくも今年で25年がたちました。事故と健康被害の因果関係はまだはっきりとしませんが、現段階で最も深刻なのは、メンタル面の被害だと言われています。

 原発事故の影響を受けていないグループと比較すると、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するケースが明らかに多い。25年前には生まれていなかった、直接事故を経験していない子どもたちにも影響が出ているといいます。事故当時、チェルノブイリ周辺にいた親が精神的に不安定になり、その親から事故の話を聞いた子どもたちの心が不安定になっているというのです。

 東京電力が原子力発電を推進するため毎年発行している冊子に、こんな内容の話が書かれています。

 「チェルノブイリでは、放射能による被ばくの影響よりも、むしろ精神的な不安のほうが脅威であることが知られています」

 事故による健康被害がないことを強調したいための論理展開。そんな思惑も透けて見えますが、ここではその点については言及しません。ただ、原発事故が人々の心理面に与える影響は広範囲に及ぶという考え方は、おそらく間違いのないところです。

 チェルノブイリでは、直接被害を受けた地域の人が避難しなければならないというストレスがありました。それと同時に「目に見えない」「いつ来るかわからない」「いつ終わるかわからない」という不気味さによるストレスが大きかったと考えられています。

 今回の福島第一原発の事故でも、ストレスの構造はチェルノブイリと同じです。しかし、いまの日本のほうが、心理面に与えるダメージは大きくなるかもしれないと私は考えています。

情報があり過ぎることで、
日本人は強いストレスから逃れられない

 理由はいくつか考えられます。

 チェルノブイリの事故では、情報伝達手段が少なかった25年前という時代、情報が隠蔽されていた社会主義国家での出来事ということもあって、情報がないことによる恐怖は少なからずあったと思います。ただ、その不安はある意味で限定的だったということも言えるでしょう。

 反対に、今回の日本のケースでは、情報があり過ぎることによるストレスが浮き彫りになっています。これまでは、情報が多いほど安心につながると言われていたのに、過剰にあり過ぎるため目を背けることも、逃げることもできなくなっているのです。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


 

香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

⇒バックナンバー一覧