経営 X 人事
中原淳のグローバル人材育成を科学する
【第4回】 2017年3月21日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]

海外赴任人材を潰してしまう企業の共通点

ある日突然「海外赴任」に困惑

「海外で活躍したい」という気持ちを維持させることが重要

 海外でビジネスを展開していくため、今、多くの企業でグローバル人材の育成の必要性が叫ばれており、多くの企業がグローバル人材の獲得や育成に力をいれいます。

 ところが、「いつか海外で活躍したい」と夢を語っていた新人を採用しても、会社でしばらく仕事をしているうちに、そのマインドを失ってしまいます。実務担当者の時期に、グローバルなマインドを失ってしまっているのです。

 こうしたことはなぜ起きるのでしょうか? 私はこの現象を「実務担当者 グローバル気枯れモデル」と命名しました。

 「気枯れ」とは、「穢れ」の語源となっていると言われている言葉ですが、文字通り、気が枯れる、エネルギーが弱くなっている、といったことを表しています。どういうことかご説明しましょう。

 今の若者たちは学生時代から、ことあるごとに「海外でも活躍できるグローバル人材を目指しなさい」という言葉を浴びせられながら育っています。実際に将来、海外で活躍できるようにと、短期、長期の留学を経験したり、語学学習に励んだりしている学生も多くいます。

 就職活動の時も、採用担当者や経営者から「みなさんには世界を目指してほしい」「グローバル人材を積極的に採用したい」などといった熱いメッセージを送られ、希望をもって入社します。

 入社後も、新人から若手の間は、「海外で活躍する」ということを意識させるような研修が行われ、「いつか海外で活躍する」という熱い気持ちを持ちながらも、国内で実務担当者として、地道な実務経験を積んでいきます。

 ところがその後、かなり長い期間、海外の「か」の字も出なくなる時期が続きます。現場のマネジャーに「海外」などという話をしようものなら、「君って意識高いんだね」「夢見てないで、目の前のことをやって」と、一蹴されてしまいます。

 「もう、海外勤務の夢など忘れよう」、そう諦めて、続けていた語学の勉強も止め、マイホームを建てたところで、ある日突然、「1ヵ月後にインドネシアに行ってくれ」といった内示が降ってくる。「今の仕事の引き継ぎもあるし、家族のこともあるし、気持ち的なところもいろいろ準備不足……」、そのような状態のまま渡航することが不適応につながってしまう、という現象です。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 


中原淳のグローバル人材育成を科学する

国内市場は縮小し、内需拡大の限界に直面しつつある今、成長が期待されるグローバル市場に乗り出していく人材の育成は、多くの日本企業にとって、今もこの先もますます重要な課題となっていく。にもかかわらず、日本企業の「グローバル人材育成」はどうも問題があるようだ。そもそもグローバル人材育成とは何か? どのように実現するものなのか? 形だけでなく、真の意味で企業の成長につながる「グローバル人材育成」のあり方を見直し、考えていく。

「中原淳のグローバル人材育成を科学する」

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