3月期決算の多い日本企業では、いよいよ年度末を迎える。会社員にとって人事評価を巡り、上司と部下の思惑が交錯する時期でもある。人事評価について、悩みやトラブルは尽きないものだが、評価に対する不平不満が多い会社には共通した特徴があり、その多くは解消できる問題である。その解消法について解説したい。(株式会社識学大阪支店長・講師、組織コンサルタント 冨樫 篤史)
「複数の評価者」の
存在が不満を招く
近年、評価の客観性を担保するために「多面的な評価」を制度として構築している組織も多く見られます。また、慣習的に評価を“実際には”複数の人間が下していることがあります。
しかしながら、この「複数の評価者」の存在が、不満の一因となっているのです。その不満要因は下記の通り、3つに大別できます。
(1)2階層以上の上に位置する上席者が直接指示をしてくる
こういうことよくありますよね。この場合、直属上司と、さらに上の上席者の指示や求める成果や優先順位が微妙に異なってくることがあります。こうなると「一体、どちらの要求に答えていけばいいのか」と迷いや混乱が生まれます。
つまり、評価は直属上司なのに、実際に積み上げた仕事はさらに上の上席者からの指示分もやっている。直属上司がその指示を知らない場合、評価対象の仕事として認識されないばかりか、評価対象の仕事のパフォーマンスを阻害する可能性さえあります。これでは、評価に不満が出るのは必然と言えます。
(2)他部署の上席者から「労いの言葉」などをかけられている
多くの組織で「部署間で連携協力して仕事を進める」という局面が少なからずあるでしょう。メーカーであれば購買と製造、開発、営業といった機能間での連携。単純に営業と営業サポートという協業関係もあるでしょう。この時、他部署の上司が仕事を直接依頼し、その結果に対して「君に依頼すれば間違いないね」「よく頑張ってくれたね」のような言動を行い、「自分の評価者が誰か」を曖昧にさせることもよくあります。