経営 X 人事
中原淳のグローバル人材育成を科学する
【第3回】 2017年2月20日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]

海外赴任が上手くいかない人材に欠けている「3つの能力」

グローバル人材ってどんな人?

 企業の人事、人材育成の世界では、「世界で活躍するグローバル人材の育成が急務です」なんていう言葉をあちこちから耳にします。国内市場は縮小し、内需拡大の限界に直面しつつある今、グローバル市場で生き残るために「グローバル人材」の育成が不可欠である、との危機感があるからです。実際、多くの企業で、「グローバル人材」を育成すべく、語学研修をしたり、若手社員を海外に派遣したりと様々な取り組みが行われています。

 ですが、私はあえてここで問いたいと思います。そもそも「世界で活躍できるグローバル人材」とはどのような人材なのでしょうか?

現地従業員に早々に見限られてしまうような人材ではダメ

 「語学力がある人」「異文化コミュニケーション力がある人」「タフな人」「交渉力のある人」など、様々な資質、能力が思い浮かびますが、意外なことに、日本で、海外で活躍する人が持っている能力について科学的にきちんと調べた研究は非常に少なく、その社会的ニーズの高さにあってはいないのです。

 そして、多くの企業では、海外で活躍する自社社員が持つべき「海外活躍力」がなにかよくわからないまま、なんとなく「グローバル人材育成」が行われている、というのが実情なのです。

「海外活躍力」とはなにか?

 「海外活躍力とはなにか?」という疑問に答えを出すべく、今から5年近く前のこと、「グローバル人材」に必要な「海外活躍力」を調べるための調査研究を、ダイヤモンド社と共に中原研究室で始めました。

 どのような研究かというと、大手企業21社の協力を得て、海外赴任者に対し、海外赴任前から赴任中、赴任後まで追跡調査し、その結果を分析するというものです(この調査の研究結果から「グローバル人材診断プログラムD-GATE」が開発されました)。

 まずは、海外赴任前にどのような特性、能力を持った人物なのかを調査し、赴任後も、その海外赴任者がきちんと適応できたのか、仕事の成果を上げることができたのかを、本人とその上司に何度も質問用紙を送って、5年の歳月をかけて追跡調査していきました。

 そして結果的に、どのような人が海外の組織に順応し、成果を上げることができたのかを分析。海外で活躍する力「海外活躍力」を定義しました。

 海外赴任者に対する調査で明らかになった海外で活躍する力、「海外活躍力」とは、ざっくり言うと、

(1)異文化対応力。多様な人々のあいだで仕事をするために必要なコミュニケーション力
(2)伝導力。仕事の経験や大切にしなければならない理念をわかりやすく説明する力
(3)基本仕事力。自ら経験に学び、ストレス環境下で部下と共に仕事をやり抜く力

 の3つの力をあわせたもの、ということになります。ここからは、(1)から(3)の能力について順に説明していきたいと思います。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 


中原淳のグローバル人材育成を科学する

国内市場は縮小し、内需拡大の限界に直面しつつある今、成長が期待されるグローバル市場に乗り出していく人材の育成は、多くの日本企業にとって、今もこの先もますます重要な課題となっていく。にもかかわらず、日本企業の「グローバル人材育成」はどうも問題があるようだ。そもそもグローバル人材育成とは何か? どのように実現するものなのか? 形だけでなく、真の意味で企業の成長につながる「グローバル人材育成」のあり方を見直し、考えていく。

「中原淳のグローバル人材育成を科学する」

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