東日本大震災からの復興を考える前に、最低限、押さえておきたい重要なポイントが1つある。それは、震災前と震災後で、わが国が直面している構造的な課題は何一つ変わっていないということだ。言い換えれば、わが国の経済・社会が何一つ問題のない健康優良児のような状態にあれば、白地に絵を描くように大震災からの復興の問題のみに没頭できるが、そうでない以上は、これまで抱えてきた(あるいは先送りされてきた)構造的な課題の検討を避けて通ることはできないということだ。

 すなわち、わが国がこれまで抱えてきた構造的な課題に、復興の問題がプラス・オンされたということである。したがって、わが国の構造的な課題と復興の問題は、同じベクトルの下で併せて解決の方向を探らなければならない。

わが国の構造的な課題を突き詰めれば、
少子高齢化、財政の悪化、競争力の低下の3点に尽きる

 では、わが国がこれまで構造的に抱えてきた課題とは何か。私見では「少子高齢化」「財政の悪化」「競争力の低下」の3点に尽きる。

第1の課題:少子高齢化

 まず、少子高齢化である。戦後20世紀後半のわが国は、歴史上稀に見る高度成長を約半世紀の長きに亘って享受してきたが、それを支えた大きな要因の1つが人口(労働力)の増加だった。これに対して21世紀前半のわが国は、歴史上類を見ないスピードで少子高齢化が進むものと想定されている。

 私は、歴史上、人口が減ってなお持続的に栄えた国も地域も寡聞にして知らない。加えて、国立社会保障・人口問題研究所の(中位)推計によると、現在は3名弱の勤労人口(20~64歳)で1名の高齢者(65歳~)を支えているが、2050年になると、これが1.2名で1名を支える構造へと変化する。誰が考えても、このような超高齢化社会が持続可能であるわけがない。そして、人口ピラミッドの是正は、一朝一夕でできることではない。

 現在のわが国は、実は、人口を増やす政策をそれこそ根こそぎで総動員しなければならない瀬戸際に既に追い込まれているのだ。