パナソニック 正念場#6Photo:kyodonews

パナソニックは、重点投資領域の一角を占めるサプライチェーン・マネジメントの分野で大胆な投資を続けている。米マイクロソフトからの“出戻り社長”である樋口泰行氏が率いるパナソニック コネクトが、過去数年で総額1兆円規模の巨額買収を実行しているのだ。コネクト社は、莫大な投資額に見合った成長を遂げられているのか。特集『パナソニック 正念場』の#6では、コネクト社の実情を大解剖するとともに、「1兆円買収」のシナジーを徹底的に解明する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

パナソニック“投資3本柱”の一角はSCMソフト
トップは「会見でAIに説明させる」型破り社長

 パナソニック ホールディングス(HD)は、重点投資領域として車載電池、エアコンなどの空調、サプライチェーン・マネジメント・ソフトウエア(SCMソフト)の3本柱を掲げてきた。

 中でも、グループ会社のパナソニック コネクトが担うSCMソフトでは、米ブルーヨンダーの買収をはじめ、巨額の資本を投下している。次ページの表のように、総額1兆円規模の買収資金をつぎ込んでいるのだ。

 コネクト社は「物売り」よりソフトやソリューションにシフトしており、グループ内では異彩を放っている。その事業変革をけん引しているのが同社の“顔”である樋口泰行社長だ。樋口氏は、2017年に同社の前身のコネクティッドソリューションズ社の社長に就任して以来、8年にわたってSCM事業を率いてきた。

 樋口氏はパナソニックの前身の松下電器産業出身だが、実は一度退職している。その後米マイクロソフトなどを経て、鳴り物入りで“出戻り”を果たした異色の経歴の持ち主だ。

 昨年6月には、パナソニックグループ各社のトップが出そろう事業説明会の場で、他社の社長が自らマイクを取ってプレゼンテーションを行う中、樋口氏はAI(人工知能)音声に自社事業を説明させるという奇抜なスタイルでメディア関係者やアナリストを驚かせた。

 だがもちろん、投資家が求めるのは結果だ。「樋口流」がいかに斬新であっても、巨額買収のシナジーを生めていなければ株主は納得しない。

 果たして、コネクト社は重点投資領域の位置付けに見合った成果を出せているのだろうか。関係者に取材を進めると、M&Aの明確なメリットが判明した一方、投資家からブーイングを浴びても仕方がない実態も浮かび上がってきた。

 次ページでは、樋口社長が率いるコネクト社の実情を大解剖するとともに、「1兆円買収」のシナジーを徹底的に解明する。