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経済指標のウソ
【第1回】 2017年3月21日
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ザカリー・カラベル, 北川知子

アメリカのGDPが突然4000億ドル上乗せされた理由

「アメリカの対中貿易赤字はもとから存在しない」「GDPはSNSの経済価値を測れない」など、経済の意外な事実が満載の新刊『経済指標のウソ』から一部を特別に無料で公開する。

(画像はイメージです)

 世界は経済指標によって定義されている。経済成長や所得、雇用など、個人や集団の経済動向を示す統計を、私たちは成功や失敗を測る絶対的な標識とみなす。

 だが、こういった数字は、どれも100年前には存在していなかった。1950年の時点でさえ、ほとんどが誕生していなかったのだ。それなのに、現在ではまるで自然法則であるかのように尊重されている。

一夜にしてアメリカのGDPが
4000億ドル拡大した

 GDPや失業率、インフレ、貿易、個人消費、株式市場……。日々押し寄せる数字に基づいて、私たちは現実を認識する。経済指標は、経済の健全性を判断するために重要な知見を与えてくれるものとみなされている。

 ところが実際に測定されているのは、指標が考案された時点で意図されたものだけだ。世界が同じ状態に留まっていないことは言うまでもない。

 世界の大きな変化を私たちが痛感させられたのは、2013年半ばのことだ。多くの人は気づいていないかもしれないが、アメリカ経済は一夜にして4000億ドル拡大した

 当時のGDPが16兆ドルを超えていたことを考えれば、数千億ドルの拡大は想定内だろう。だが、このときの拡大は通常の経済成長によるものではなく、経済活動が突如活発になったためでもない。4000億ドルはふいに出現したのだ。

 それだけではない。明らかに以前から存在していた。2013年7月31日、アメリカ経済の規模を測定する商務省経済分析局(BEA)は、GDPの計算方法を変更したと発表した。その結果が、4000億ドルの調整だった。

 BEAの説明を聞けば、誰しも輸入が漏れていたせいだと考えるだろう。BEAは数字が確定する何ヵ月も前に変更について発表していたが、「2013 年の国民所得・生産勘定の包括的改定について―定義と説明の変更」という見出しは7月の正式発表同様、ほとんど目に留まらなかった。

いままで「研究開発費」は
単なる支出扱いだった

 新たにGDPに加わることになったのは、「研究開発費」だ。「新製品の発明や開発(既存製品のバージョンアップや品質改善を含む)、新たな、より効率的な生産プロセスの発見や開発を目的として、知識を蓄積し活用するために体系的に行われる活動」を設備投資として参入する。

 味気ない文章の背後で、経済を理解する方法が根本から変更されようとしていた。振り返ってみれば、世界恐慌まではどの国も国民生産を測定することはなかった。

 1930年代の世界恐慌によって、今、何が起きているのかを少しでも明らかにする必要に迫られ、アメリカとイギリスは統計の考案に取り組む。こうして誕生した「国民所得」と「GDP」という2つの重要な統計指標は、20世紀半ばには各国で使われるようになった。

 統計指標が測るのは、主に農業や製造業などによって新たに生産された財であり、国民国家を単位とした世界だった。ところが、その後数十年のあいだに、アメリカをはじめとする多くの国の産業は、製造業からサービス業へ、工場でのモノ作りからアイデアの創造へと大きく変化している。

 統計担当者がずいぶん前から認識していたように、経済の中心はアイデアや知的財産に移行している。ところが経済統計が誕生したときには、研究開発費のような活動は国民生産に含まれていなかった

 つまり、2013年にBEAが変更を発表するまで、製薬会社が新薬開発に費やした何十億ドルもの資金は、将来莫大な利益をもたらす可能性のある投資としてではなく、単なる支出として処理されていたのである。

 企業が工場で使うロボットを購入すれば、それはGDPの一部となるが、アップルがiPhoneの開発に巨額の資金を投じてもGDPには含まれなかった。

 テレビ番組や映画、音楽などの創造的な取り組みも計上されてこなかった。レディ・ガガの曲作り、アップルの次期iPad開発、ファイザーの新薬開発などへの投資を合計すると、アメリカの経済規模は4000億ドル過小評価されている。この現実にBEAは気づいた。これは約90ヵ国のGDPを上回る額だ。

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ザカリー・カラベル(Zachary Karabell)

アメリカの経済・投資情報会社リバー・トゥワイス・リサーチ代表。作家、投資家、コメンテーター。コロンビア大学、オックスフォード大学を経て、1996年にハーバード大学でPh.D.を取得。現代史や経済関係など11の著書がある。CNBCやCNNなどにレギュラーコメンテーターとして出演、ウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズ、ニューズウィークなどの寄稿者としても活躍している。


経済指標のウソ

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