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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

百貨店の業績低迷と自己努力不足との因果関係

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第52回】 2011年5月12日
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 日本の百貨店業界にとって受難の時代が続いている。2010年の全国百貨店の売上高は、14年連続で下がり続けており、1982年以来、28年ぶりの低水準にまで陥ってしまったと報じられている。東日本大震災が起きた今年の売り上げはおそらくもっと落ち込むだろうと思う。

 日本の百貨店の低迷の背景には、経済状況が悪いなどいろいろ外的要因はある。しかし私から見れば、百貨店側の努力不足によって起こるべくして起きた低迷現象という内的要因もあるのではと思う。

 私は世の男性の例に漏れずあまりデパートをまわらない。それでもたまには妻の買い物の相手になってまわることもある。その少ない経験の中でも何度か信じられないデパートの「サービス」ぶりに遭遇し、空いた口が塞がらない体験をした。たとえば、7年前の2004年、新宿南口にあるTデパートでの体験だ。

 デパート内のブティックで気に入ったスラックスが見つかり、値段も特に確認せず買うことに決めた。妻と店員のやり取りを横でぼんやりと聞いていた私の耳に、「すそ上げは中3日かかります。料金は1500円のところ、今日はサービスで900円です」という店員の言葉が飛び込んできた。

 中国のデパートでは無料でしかもその場で仕上げてくれる。上海に進出した日系デパートや日系ブティックも同じだった。中国のデパートを取材した時、なぜすそ上げを無料で仕上げるべきか消費者に聞いたことがある。消費者の答えは、「取り付け工事を済ませなければ、エアコンは使用できない未完成品だ。ズボンも同じだ」という。日本では別料金のエアコン取り付け工事も、中国では無料だ。その意味では、ズボンもすそ上げ作業が終わらなければ、同じく未完成品なのだ。

 これらのことを思い出した私はついついジャーナリスト根性を出し、「すそ上げの料金はサービスしてもらえるのか」とTデパートの対応をチェックしてみた。展開は私の予想通りとなった。店員は開口一番「デパートの決まりだから」と譲らない。男性課長も、「会社に報告して検討するが、決まりが変わることはない」と言い切った。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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