なぜ若手社員は同期を「さん付け」で呼ぶのか新入社員が入ってくる4月はもうすぐ。職場の仲間が増えるのは楽しみですが、世代によってコミュニティへの感覚に大きな差があることに気づいていますか?

今どきの若手は同期を「さん付け」
SNS世代の仲間感覚

 先日、ある企業の若手社員の訪問を受けた。2人の男性がやってきたのだが、聞けば入社3年目の「同期」だという。しかし、2人が話すところを見ていると、どうも違和感がある。彼らはお互いを「さん付け」で呼び合っているのだ。失礼を承知で、あえて聞いてみた。

「2人は仲が悪いの?」

 彼らは「いえいえ、良好ですよ。いい仕事仲間です」と笑って答える。その言葉には何の含みも感じられない。きっと、本当にいい関係なのだろう。となると、オジサンとしては余計に不思議になる。

「それなら、どうして『さん付け』してるの?」

 なぜ私がそんなに不思議がるのか、分からない人もいると思う。

 それでは説明しよう。私たちオジサン世代にとって同期というのは家族のような、ライバルのような、友達のような、特別な存在だ。入社早々、新人歓迎会で通過儀礼としての「芸」を一緒にやらされたり、「新人研修」で膨大な知識を詰め込まされて一緒に苦労したり。そういった悲喜こもごもを通して同期との関係はより深く、より濃密になっていく。

 家族に「さん付け」する人はめったにいないだろう。私にとって同期への「さん付け」は、それくらい不思議なものなのだ。だから、さらに彼らに聞いてみた。

「君たちは『さん付け』しない人っているの?」

 すると、彼らは中学・高校・大学の仲間には「さん付け」しないと言う。

 なるほど、私たちの時代はSNSはおろかメールすらなかったから、就職すると学生時代の仲間とは一旦疎遠になるものだった。物理的に距離が離れるし、必要がなければ連絡はしない。すると、数年に一度あるプチ同窓会のような場で会う以外、彼らの近況を聞く機会もなくなる。

 結果、就職すると「社縁」にがっちりと組み込まれる。特に、就職をきっかけに上京したり、配属先が遠隔地になったりすれば、学生時代の知り合いも周りにいなくなる。「共同体」の底辺での下積み時代を共にする同期は、唯一ホッとできる相手だ。だからこそ、同期への「さん付け」などあり得なかった。これは、SNSが浸透した時期にすでに就職していた30代以上のビジネスマンなら、共感してもらえるところだと思う。