震災復興の資金需要は、危険水域の日本の財政問題にさらなる重石を加える。5月2日に成立した2011年度第1次補正予算では、基礎年金国庫負担分の転用などの苦肉の策で財源を確保した。だが、10兆円とも20兆円ともされる第2次補正予算は、増税をめぐる議論を避けては通れない。政府に覚悟と実行プランはあるか。
「危機から脱却するための政策が、新たな危機につながることは避けなければならない」(河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト)
日本の財政悪化は、抜き差しならぬ段階に来た。昨年末時点で、政府総債務残高のGDP比は199%に達した。震災復興の財政負担は、さらなる悪化要因となる。
中長期の財政再建に関しては、消費税引き上げはもはや前提事項というのが経済学者やエコノミストの大多数の見方だ。一方で、短期の復興財源は分けて考えるべきという意見も少なくない。まずは予算歳出の組み替えで対応すべきだし、増税が時間的にも間に合わなければ、国債発行で資金繰りを行うほかないのは事実である。
しかし、国債を増発する場合、その償還プランをしっかり示すのが不可欠だ。税率やタイミングには議論の余地があるとしても、増税の意志とスケジュールは早急に明示する必要がある。
三菱総合研究所の武田洋子主任研究員は、「復興財源の確保のためにも、財政規律の維持が重要」と指摘する。「財政への信認が揺らげば、長期金利の上昇を招く。金利が0.5%上がるだけでも利払い費がそうとう増え、使える財源の余地が狭まってしまう」からだ。
民主党は、菅直人首相の諮問機関「東日本大震災復興構想会議」が6月末に復興ビジョンの提言を行い、これを受けて7月以降に第2次補正予算を編成するとしている。同じく6月末には、「税と社会保障の一体改革」の改革案も示される予定だ。
重要なのは、これらがバラバラではなく、整合性を持って遂行されることだ。しかし、現時点ではその道筋が不透明に過ぎる。
複数の関係者によれば、厚生労働省、財務省の担当部署レベルでは社会保障改革と消費税引き上げの具体案を粛々と詰めており、また菅首相、および官邸も、これに前向きな模様だ。各種世論調査で、復興税については過半数の国民が容認しているのも支援材料である。
だが、菅政権の運営は安定にはほど遠い。野党はもちろん民主党内でも、増税への反対論は根強い。