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なぜ「食の安全」はいつまでも確保されないのか
危険性を顧みなかった企業と行政の知られざる実態
――消費者問題研究所・垣田達哉代表に聞く

2011年5月18日
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過去、BSE(牛海綿状脳症)問題や中国毒入り餃子事件、菓子メーカーによる賞味期限の偽装、高級料亭の産地偽装などによって「食の安全」に対する信頼を揺るがされてきた食品業界。その都度、管理体制の見直しや安全対策が求められてきたが、今回も焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で出された「ユッケ」によって集団食中毒が発生し、4人の死者を出す事態に至った。なぜ、食品の安全性問題は後を絶たないのだろうか。食品問題評論家で消費者問題研究所代表の垣田達哉氏に、今回の食中毒事件の背景に隠された企業と行政の実態と今後それぞれに求められる対策について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

起こるべくして起きた「ユッケ食中毒事件」
危険性を知りつつ法整備しなかった国の責任

――これまで幾度となく食品の安全を揺るがす問題が起きてきたが、その教訓が活かされていないかのように、焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」でユッケ食中毒事件が発生した。なぜ食品の安全性問題は後を絶たないのか。

かきた・たつや/消費者問題研究所代表、食品問題評論家。1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品表示アドバイザーとして『テレビじゃ絶対放送できない食の裏話』など著書多数。

 そもそも今回の食中毒事件には、これまで大きく取り上げられてきた食中毒や偽装事件とは大きく異なる点があることを覚えておいていただきたい。それは、非常に残念ながら、本来は行政によって発生を防ぐことができた問題にもかかわらず、その対策が施されなかったために、起こるべくして起きてしまったという点だ。

 10年ほど前より各地方自治体から、現状の食品衛生法では、肉の生食による食中毒に対する法整備が甘すぎるという声が上がっており、2009年には「ペッパーランチ」、10年には「焼き肉安安」で大腸菌O157による食中毒が起きた後も、法整備すべきとの声は一層高まりをみせていた。

 確かに、厚生労働省は生食用の肉を流通させる場合、病原菌が付着する肉の表面を削る「トリミング」を行うことを衛生基準として定め(1998年通知)、卸業者と飲食店の双方に実行を求めていたのは事実だ。しかし、それは行政指導に留まり、法的な拘束力や罰則は定められていなかった。つまり、行政が食品衛生上の問題としての食中毒の危険性や対策の必要性を十分に認識していながら、法整備も監視もしなかったのが実態であった。そうした甘い認識しか持っていなかった国の責任は非常に重い。もし法的に罰則などが決まっていたならば、食品衛生法上の基準にのっとって保健所が監視を行った上で、営業停止や罰金などの処分をすることで、事件の発生を防ぐことができたはずだ。

――なぜ、危険性が叫ばれていながら、国は法整備をなさなかったのか。

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