米国の金融専門家の目には、現在の金融市場や米トランプ政権の今後の方向性はどのように映っているのか。米投資銀行ブラウン・ブラザーズ・ハリマンで通貨戦略最高責任者を務める、マーク・チャンドラー氏の来日に合わせて、その見解を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部・鈴木崇久)

オバマケア撤廃問題がトランプ政権と金融市場を揺るがすマーク・チャンドラー(Marc Chandler)
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨戦略最高責任者
Photo by Takahisa Suzuki

「ドル円レートは2017年末にかけて118~120円のレンジに戻ってくるだろう」

 ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略最高責任者を務めるマーク・チャンドラー氏は、ドル円為替レートの今後の展開について、そのように見通す。そして、為替市場を左右する主なポイントは日米欧における政策の方向性の違いにあると語った。

 チャンドラー氏は、欧州中央銀行(ECB)において量的金融緩和政策(QE)の終了前における利上げの可能性を探る議論が浮上したことや、英中央銀行イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会における投票で1人の委員が利上げを主張したことを指摘。また、米国では米連邦準備制度理事会(FRB)が3月15日に利上げを発表している。

 こうした欧米における緩和政策からの転換に対して、日本銀行の最近の金融政策は「テクニカルな微修正」(チャンドラー氏)に過ぎず、方向性の違いが生まれている。

 そして、チャンドラー氏は米国のインフレ率の高まりや欧州の政治リスクが後退することによってドルが押し上げられ、ドル円レートが118~120円のレンジに戻ると予想している。

 また、チャンドラー氏はドナルド・トランプ米大統領について、よく指摘されるような「孤立主義」でも「保護主義」でもないと否定。トランプ政権は、実はグローバルな考えに基づいた政策を掲げている側面も持っており、その政策は「ユニラテラリズム(単独行動主義)」なのだと説いた。