2型糖尿病(2DM)患者は、がん死リスクが非患者より高いことが知られている。

 ただ、それを裏付ける研究の大半は欧米人が対象。もともと糖を代謝するホルモン「インスリン」の分泌が少ない東アジア人でも、欧米人と同様に発がんリスクが上昇するかは曖昧だった。

 先日、中国、日本、台湾などアジア7カ国で行われている19の疫学調査から、2DMと発がんリスクについて統合解析した結果が報告された。日本からは、生活習慣とがん、心筋梗塞、脳卒中との関連を調査した国立がん研究センターの「JPHC研究」(継続中)など8研究が採用されている。

 対象者は日本など東アジア圏の65万8611人、インドなど南アジア圏11万2686人の合計約77万人に及ぶ。男女比はおよそ1対1で、研究開始時の平均年齢は53.9歳だった。平均12.7年の追跡期間中に3万7343人ががん死している。

 喫煙や飲酒習慣、体格指数(BMI)など他の影響を調整して解析した結果、研究開始時点で2DMを発症していた人の全がん死リスクは、非患者より26%上昇することが示された。

 特に強い関連を示したのは「肝臓がん」「子宮内膜がん(子宮体がん)」で、どちらもがん死リスクが2倍以上に上昇した。そのほか、「甲状腺がん(非患者比で1.99倍)」「腎臓がん(同1.84倍)」のリスクも有意に上昇している。「膵臓がん」は同1.53倍、「大腸がん」は同1.50倍、「前立腺がん」は同1.41倍だった。

 一方、「肺がん」「胃がん」「食道がん」「子宮頸がん」では有意な差を認めなかった。

 2DMでは、インスリン作用不足を補おうと過剰なインスリン産生が生じる。インスリンは血糖を代謝してくれる一方、がん細胞を増殖させる側面を持つ。また、2DMに伴う慢性的な炎症もがんの発症リスクだ。2DMの方は、長期的な合併症の一つとして、がんも頭に入れておくべきだろう。

 春の健康診断で「糖尿病予備群」と指摘されたら、肝炎ウイルス検査と肝臓の超音波検査を、女性は子宮がん検診も受けておこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)