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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

天変地異ほどの一大事、景気後退の日本は変われるのかと釘を刺され

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第47回】 2011年5月25日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は日本経済についてです。あの会社もこの会社も業績が落ち込み日本は「景気後退(recession)」 に逆戻りしたと書かれる状況だが、多くの投資家は日本回復を信じているという話です。別の言い方をすると、日本が変わるには天変地異ほどの一大事が必要だと言われていただけに、実際に天変地異が起きてしまった今、日本は回復するだけではなく、変わらなくてはなりませんよ、世界は見ていますよ――という話でもあります。(gooニュース 加藤祐子)

定義上「景気後退」と断定

 東日本大震災が起きて、被災そのものや原発事故に対する懸念のほかに世界が心配したのは、世界経済への影響でした。日本は中国に追い抜かれたばかりとは言え、世界第3位の経済大国ですし、その産業は世界のサプライチェーン(供給網)にがっちり組み込まれている。どこかの密林に住む蝶の羽ばたきが世界にどう影響するかというバタフライ効果(和風に言うなら風と桶屋)ではありませんが、東北地方に生産拠点の多い自動車・電子部品の供給不足などが世界経済にどう影響するのか、地震直後から懸念されていました。

 現に国内企業の3月期決算では、自動車・電機関連にとどまらずあらゆる業種で減収・減益・損失の発表のオンパレード。内閣府が19日発表した2011年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率換算で3.7%減。2期連続のマイナスで、4~6月期も3期連続になるという見通しです。

 これについて、与謝野馨経済財政担当相は同日の記者会見で「リーマン・ショックとは状況が全く異なる」と述べ、景気後退局面には当たらないとの見解。それを受けてか(私が見た限り)国内報道も「景気後退の見方を否定」という記述が大半でした。

 一方で英語メディアは軒並み、「日本は景気後退」と断定。たとえば、19日付の英紙『フィナンシャル・タイムズ』では、ミュア・ディッキー東京支局長が「日本は景気後退に逆戻り(Japan slides back into recession)」という見出し記事を掲載。「日本の壊滅的な地震と津波は、経済を予想以上に深く景気停滞へ押し込んだ。そのため、世界第3位の経済大国の今後について疑念が浮上することとなった」と書いています。「前期比0.9%減」というのは「エコノミストたちが予想する下げ幅の倍近い」ものだったと。

 記事は与謝野氏が会見で「日本経済の反発力は十分に強い」と述べたことにも触れつつ、「日本経済は今や2期連続で縮小した。つまり、最も広く使われている『景気後退』の定義に合致したということだ」と指摘。さらに、GDPの年率換算3.7%減は「自然災害と、それによって引き起こされた福島第一原発での原発事故による混乱の規模を、強調するものだ」と、政府見解に疑念を示しています。ちなみに「混乱」と訳した単語は「disruption」。何かが通常の状態ではなくなってしまうことを意味します。「経済の正常な動きが寸断された」という意味です。

 このFT記事のほか複数記事は、アジア経済に詳しいHSBCグローバル・リサーチのエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏の分析リポートを紹介。それによると、1~3月期に与えた震災の影響は終盤3週間だけで「1~3月期全体にわたる意外な弱さを説明しきるものではない」とのこと。10-12月期のGDPが年率1.3%減に下方修正したことからしても、日本経済は震災が起きる前からすでに「大方で思われていたほどの勢いはなかった」という見方です。

 同様に米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』も「Japan Slides Into Recession(日本は景気後退へ滑り落ちる)」と見出しで断定。「3月11日の地震と津波が消費行動や投資、民間在庫を悪化させる中で、日本は景気後退に陥った」と書いています。米紙『ロサンゼルス・タイムズ』も、「Japan slips back into recession」という見出しで、GDP前期比0.9%減という統計によって「復興作業を加速化させる第2次包括的刺激策を前倒しするよう、菅政権への圧力が強まるかもしれない」という、INGフィナンシャル・マーケットリサーチのエコノミストの見方を紹介しています。

 ところでもうお気づきかもしれませんが、どの見出しも「slip」とか「slide」とか「滑る」「滑り落ちる」という単語を使っています。「景気後退に滑り落ちる」などと。「recession」とは英語ではそういう足下不安定なもののようです。

 話を戻します。日本は景気後退に滑り落ちた。では懸念されていた世界経済はどうか。前述の『ウォール・ストリート・ジャーナル』記事によると、「日本経済の弱さは、ほかの多くの国と対照的だ。多くの国は景気回復に伴い、国際金融危機で実施した景気刺激策の終了に向かっている。1~3月期で、ユーロ圏17カ国のGDPは年率換算3.3%上昇し、アメリカでは同1.8%伸びた」とのこと。

 『ニューヨーク・タイムズ』記事は、「金融危機の後、アジア地域ではほとんどの国が素早く回復したが、日本はずっと後れを取っていた。中国やインドといった地域の重量級は急速に成長しているし、シンガポール政府は19日、製造業が堅調なおかげで経済が1~3月期で前年同期比8.3%拡大したと発表」したと。「Japan has long been the laggard in the Asian region (日本はずっとアジア地域で遅れを取っていた)」というこのくだり、「laggard」という単語には「のろま」とか「ぐず」とかいう意味もあるので、手厳しい限りです。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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