江戸の町人まちは、1km2当たりの人口密度が5万人とも6万人とも言われた。いや、つい戦前まで、台東区はこれとさして変わらぬ超過密都市だった。

 人々のエネルギーは狭い家の中からまちへと溢れ出し、そのバイタリティが綺羅星のごとき商店街の連なりを生み出していった。人とまちと商店街。この当たり前の関係を見つめ直すことは、商店街の未来を語る原点だ。台東区の商店街が、格好のお手本を示してくれる。

「受難の時代」のはずの商店街が増加中!?
「製流販」が一体化した地場産業型の集積が強み

 台東区は、商業活動が最も高密度に集積する区だ。面積1km2当たりの密度を見ると、商店街数密度も小売店密度も23区最高。ともに2位以下を大きく引き離す。

台東区の商店街――「受難の時代」にもかかわらず、商店街が8年間で15箇所も増えた驚異

 しかもだ。商店街の数が増えている。2001年~2009年の8年間で、商店街の数は15も増加した。「商店街受難の時代」と言われるこのご時世に、驚くべきことである。

 商店街が増えているのは、とりも直さず専門店が元気だからに他ならない。百貨店を抱える副都心区でありながら、大型店密度は7位に止まるのに対し、専門店の密度は1位。区内の3つの百貨店のうち、浅草の松屋と上野の丸井は商店街の外れにあるし、松坂屋の御徒町も主役はアメ横をはじめとする専門店だ。

 宅地に占める併用商業施設用地の割合が23区で一番高いことからも、商と住が混在した商店街型専門店の広がりがうかがえる。

 製造、流通、販売が一体化した地場産業型の商業集積が多いのも、台東区の特徴だ。その代表は皮革産業。皮革製品製造の工場数は1位、靴、履物の問屋数も共に1位である。東武浅草駅の北には、花川戸の靴・履物問屋街が延びる。小売業の分野でも、履物屋の数は1位、靴屋は2位に位置する。