米小売企業の多くは、ドナルド・トランプ次期大統領が第1次政権下の2018年に開始した関税措置をおおむね無傷で乗り切った。だが、第2次政権では関税がもたらす影響がより大きくなる可能性がある。
トランプ氏は今回、米国の全ての輸入品に対して10~20%の関税を課し、中国からの輸入品には60%以上の関税を課すことを提案している。その一方で同氏は、不法移民と麻薬を巡る問題に絡めてカナダとメキシコからの輸入品には25%の関税を、また中国に対しては追加で10%の関税をかけるとも表明しており、状況はやや複雑になっている。
このため、第2次トランプ政権の最終的な関税政策がどのような形になるかははっきりしないものの、中国を標的に2018年から始まった前回の関税よりも懲罰的かつ広範囲に及ぶとみられている。関税への対応策として、米小売企業は調達先の多様化を進めてきた。米国が輸入する繊維・アパレルのうち、中国からの割合は2017年の37%から昨年は26%に低下した。調達先はベトナムやインド、バングラデシュなどにシフトした。
関税の影響は小売りカテゴリーで最も鮮明に表れた。例えば、2018年初めに家庭用洗濯機の輸入品を対象にした20%の関税が発効。米連邦準備制度理事会(FRB)とシカゴ大学のエコノミストによる19年の研究によると、これを受けて洗濯機の価格は関税導入後の数カ月間で約12%上昇しており、関税コストの大半は消費者が負担したことが示唆されている。
トランプ氏の主張とは裏腹に、関税コストは輸出業者の負担にはならなかった。米国際貿易委員会(ITC)の調査リポートは、2018~19年の関税に伴うコストは米国の輸入業者が全て負担したと結論づけている。