(『希望をはこぶ人』の第6章で)ジョーンズが、希望がある証として「あなたはまだ呼吸をしているでしょう」と言っていますよね。呼吸をしているということは、まだ生きているということ。そして、まだ生きているということは、生まれてきた目的をまだ果たし終えていないということなのだ、と。

 今こそ、自分の目的を探すときです。誰を助けることができるか、誰のお手本になれるか、見つけるときなのです。あなたの行動が次の世代に影響を及ぼすことになるのですから。

 この悲劇にどう対処するかは、この先何世代にもわたるあなた自身の家族と、固唾をのんで見守る私たち――日本のみなさんが勇気をもって悲劇に立ち向かい、この状況を機会に変えて行動を起こすことを見守っている私たち――に、大きな影響を及ぼすことになるのです。

自分自身を変えることは、それほど大したことではない。
小さな変化がやがて大きな違いを生む。

――日本人の思考傾向をご存じかどうかわかりませんが、日本人は否定的に思考する傾向にあります。

 それはみんなそうですよ。日本人に限らず、誰でも否定的に考える傾向にあります。我々は常に現状しか見ませんからね。

 しかし、我々が目を向けるべきは、現状ではなく「起こりうる状況」です。こうしたらどうなるか。これが起こったらどうなるか。これを起こすことができたらどうなるか。この人に会うことができたらどうなるか、この人を助けることができたらどうなるか、ということです。こういう物の見方には、驚くべき可能性があるのです。

 自分の人生をどう見るかについて、ジョーンズは私にこう言いました。「君は何を見て、何を食べているんだい?」と。私が「砂の上に腰を下ろしてソーセージとイワシを食べている」と言うと、彼はこう答えました。「私は浜辺で海の景色を眺め、潮の香りを満喫しながらごちそうをいただいている」。

 同じ状況であっても違う物の見方ができる人は、異なるものを得ることができるし、人とは違う機会を得ることができます。

ホームレスから「アメリカで最も影響力のある人物」になった男の逆転人生――きっかけは「物の見方」を変えたこと本の内容に共感したという人々からの講演依頼も多い。(Photo by Peter Nash)

――人は自分の失敗を忘れて、同じ失敗を繰り返す傾向にあります。過去の経験からまったく教訓を得ないときもあります。物の見方を変えないからだと思いますが、やはり少し物の見方を変えなければなりませんね。

 その通りです。自分自身を変えることは、それほど大したことではありません。よく、がらりと変わらなければいけないんじゃないかと思われがちですが、実際にはごくわずかな変化なんです。ちょうど、ボートに乗って海に出るようなもの。角度を1度変えると、そのときはそれほど大した違いがないように見えても、何マイルも行くにつれて大きく変わってきますよね。