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日本を元気にする新・経営学教室

業績低迷の元凶と批判された日本の人事部
いま問われるその資質と役割は何か
神戸大学大学院経営学研究科教授 平野光俊

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],髙木晴夫
【第18回】 2011年6月6日
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 日本の中堅・大企業(以下、日本と略記)で観察されるキャリア形成は、一つないし二つの職能の範囲で仕事経験を積みながら「知的熟練」(普段と異なる変化と異常への対処能力)を高めていくパターンが主流である。

 つまり前の仕事の経験や習得したスキルが、今この仕事に連続的に活きる異動を重ねながらキャリアの幅は広がる。ジョブローテーションと呼ばれるこのような異動のパターンでは、不熟練の仕事への配置換えによる生産性の一時悪化(機会コスト)は小さくてすむ。しかし、人によっては属性的・技術的に関連の薄い部署への非連続な異動がかかることもある。非連続な異動とは前の仕事経験によって培われたスキルが、まるで役に立たないようなケースである。

 前回のコラムでは、ジョブローテーションを通して開発される知的熟練から、組織は効率という便益を獲得できることを解説した。同時に非連続な異動を通して、従業員(保有するスキル)と新しい役割(要求するスキル)の関係におけるスキルの「余剰」と「不足」のギャップを意図的につくり出し、それをイノベーションにつなげることの可能性を述べた。

 非連続異動の場合は、誰を配置すればパフォーマンスを高めるのかに関する推察力が問われるが、そのアレンジは「人材マネジメント型企業変革リーダー」の重要な役割である。そのように考えると、異動の企画に深く関わる日本の人事部は人材マネジメント型企業変革リーダーの側面を持っている。今回のコラムでは人事部が異動に関与していくことの意義を、日本型組織モードの関係から検討してみたい。

日本型人事管理の3つの特性

 「Japan as No.1」と持ち上げられた1980年代、国際競争力の源泉として脚光を浴びた日本型人事管理は、次の3点において特徴付けられる。

1)多くの労働者を対象に知的熟練を高めるための「幅広いキャリア形成」、
2)知的熟練を促進するように設計された「人(能力)」基準のインセンティブ制度(評価と報酬の仕組み)すなわち「職能資格制度」、
3)異動にイニシアチブを発揮する「強い人事部」、である。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。


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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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