1990年頃から海外の製造業の現場では、日本企業からの「知恵抜き」が盛んに行われてきました。
それから20年が経った現在、日本企業はグローバルでの激しい市場競争に身をさらされています。かつて世界のトップの座にいた電機業界は青息吐息で、自動車業界も海外市場で告発され、アジア勢から猛追されています。
これは自由競争の中でそうなったのではなくて、海外から仕掛けられてきた「知恵抜き」の結果だったのです。
日本はグローバル化の加速によって、海外からあの手この手で戦略攻撃を受けてきたのです。そのことに未だに気づいていない日本人が多すぎます。
なぜ「知恵を抜いてやろう」という相手の目論見どおりになるのか、日本人の脇の甘さ、相手の狡猾さに気づかない警戒心のなさについて現場事例を交えながら、解説をしていきます。
「知恵抜き」はOEMの失敗
■OEMが委託先を成長させた
1990年頃から日本企業は製造現場を海外に移転させて、自社工場だけでなく、OEMとして海外企業にも製造委託してきました。当時の日本メーカーは世界のトップに位置して、日本のOEMはアジアで大歓迎されていたほどです。
現地の委託先でプライベートな話をすると、さまざま話題が出てきます。
以前来たときに、「コーヒーをおねがいします」と頼むと、「この国では女性が男性にそんなことを頼むものではありません!」と真っ赤な顔をして怒鳴られたという話を紹介し、「日本とは似て非なるものがたくさんあるんですね」と異文化論で盛り上がっていました。
「われわれは、日本と仕事をすると、勉強になることが多いんですよ。OEMをやるとどんどん成長できます」
「そうなんですか」
「製造ラインで、技術者からここが違うと指導を受けていると、そうかこういうふうにやるとよくなるのか、どんどんいろいろなことがわかるようになるんです。今度はそれを自分たちの製品に生かしてすぐつくるんです」
「……」
OEM先との契約はどうなっているんだ!と思いながらも、日本人の「お人よし」を痛感させられました。