のれん代とは、トールを買収すれば将来これだけの利益をもたらすだろう、と「取らぬタヌキの皮算用」を金額にしたものだ。

 アジアに展開するトールのネットワークと日本郵政の潤沢な資金が融合すれば、4000億円ぐらい取り戻せる、と日本郵政は説明していたが、「絵に描いたモチ」だったことが明らかになった。

 トールは金の卵を産むアヒルではなく、従業員2000人の削減を迫られるメタボ体質の企業でしかなかった。

 2015年に決めた買収は、「ほとんど西室社長が一人で決めた買収だった」と日本郵政の関係者はいう。この年の秋に郵政3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の上場が予定されていた。

「政府の保有株を段階的に放出するため、株価を上げるためのお化粧が必要だった」

 日本郵政のOBは指摘する。政府の収入を増やしたい財務省の意向を踏まえ、郵政グループを実態より大きく見せる「化粧道具」にトール買収が使われたというのだ。

 郵政グループは利益の80%以上を郵便貯金が稼ぐ。郵貯は昔のような優遇措置がなくなった。規模は年々減っている。上場に弾みをつけるため、国際物流進出という大風呂敷を広げ、買収で売り上げと利益を膨らませたのである。

 目先の「打ち上げ花火」に6000億円が使われたということだ。描いてみせたシナリオは、

「国内の郵便事業は頭打ち。成長を求めれば海外しかない。郵便で得た知見を国境を超える物流に生かせば国際企業になれる」

 どこかで聞いたセリフではないか。

「国内の原発には限界がある。世界市場に打って出るしかない」

 東芝が米国でウエスティングハウスを買った時のうたい文句とそっくりだ。