「存亡の危機」を
迎えている名門企業の東芝

なぜ東芝は「近視眼経営」のワナにはまったのかphoto by Takahisa Suzuki

 わが国を代表する“名門企業”である東芝は、不適切会計に続き巨額の減損の発生によって今、「存亡の危機」を迎えている。

 不適切会計問題の解明が進む中、2008年度から2014年度期中までに同社では、1500億円超の利益操作が行われていたことが明らかになった。この問題の調査にあたった第三者委員会は、経営トップらを含めた組織的な関与があったことを指摘している。

 また、今回、東芝の決算開示が遅れたり、配当が見送られるなど、ステークホルダー(利害関係者)に多大な影響が出ている。かつての名門企業の面影はほとんど見られない。

 問題の発端は昨年12月27日にさかのぼる。東芝は、傘下の米原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリックを通して買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスターに絡む減損が必要であることを公表した。

 それ以降、市場では東芝が債務超過に陥り、先行きの経営リスクが高まるとの見方が急速に広まった。この結果、昨年12月半ば450円程度で推移していた株価は、2月中旬、200円を下回る水準まで下落した。

 東芝の技術力は高く、優秀な人材を多く抱え、半導体、家電、原子力などの分野で存在感を示してきた。その企業が、なぜ、わずか数年間の間に市場を騒がせる問題を発生させているか、「問題の根源」を冷静に考える必要がある。

 一言でいえば、経営者が「高収益計上の誘惑」に負けたことだろう。そして、それをカバーすべきガバナンスが働かなかったことだ。この問題は根の深い問題であり、単に東芝だけの問題ではない。多くの企業にとって「対岸の火事」ではないのだ。

 企業が利益を追求する以上、時として経営者は「目先の利益」を確保しようとしてしまう。そのエネルギーをいかにして短期的ではなく、長期的な利益獲得につなげるか、各企業はもう一度経営の原点に立ち返ってガバナンスの機能を見直し、強化していくことが必要だ。