近視眼の経営者と
「親米財界人」の罪深さ

 そこを金融外資が狙う。「カネはあるがチエがない」という弱みが企業にあった。

 本来なら国内の労働環境を改善し、研究開発体制を再建するのが経営者の役割だろう。そんな悠長なことをする時間がない、次の決算で頭がいっぱい、という短期業績主義が産業界の主流になった。

 内部留保370兆円のかなりの部分は従業員の犠牲の産物だ。汗と涙が企業の貯金を殖やした。そのカネが外国企業の買収に充てられる。汗と涙の結晶は海外に流出する。その投資で利益を稼ぐ、というならまだ許せる。6000億円投資して4000億円損した。背徳行為ではないのか。

 日本郵政は国内で商売している。津々浦々の郵便局が、職員を減らし非正規に代え、預金を集め、郵便を届け、ツメに火を灯すようにして稼いだカネである。国内の儲けは国内に還元するのが好循環経済の原則ではないのか。

 国内のカネを海外で使えば、国内消費を減らし、外国の消費を増やすことになる。M&Aブームは労働現場の疲弊によって生まれ、その失敗は国富を流出させる。

 東芝を見れば分かるだろう。米国原子力業界の不始末を東芝が引き受け、宝物である半導体部門を外資に売る。その失敗が日本郵政で繰り返された。

 西室泰三は「親米財界人」として評判が高い。経済摩擦や通商交渉の裏で動いた人物として知られている。

「日米同盟」と呼ばれる今日の日本とアメリカの関係は「同盟」と呼ぶような「対等な関係」でないことは読者諸兄もご存じだろう。その関係は、経済にも投影する。親米財界人は、米国に都合のいい人物であることが多い。

 長かった米国勤務をバネに東芝で社長・会長として君臨した西室は、日米財界人会議の日本側の座長を務めた。やがて東京証券取引所の会長になり、民営化される日本郵政の社長に収まった。

「老害経営者」ともささやかれるほどの人物を、そこまで押し上げた力は何か。西室は、誰のために、何をしたのか。その航跡は改めて書く。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史、文中一部敬称略)