「あのリコール署名は何だったのかという市民の怒りが私たちにも寄せられています」
地域政党「減税日本」に所属する名古屋市議の1人は「あのリコール署名は何だったのかという市民の怒りが私たちにも寄せられています」と語る。
こう語るのは、地域政党「減税日本」に所属する名古屋市議の1人である。議員特権や家業化を批判して市議会リコールに成功し、今年3月の出直し市議選で最大会派となった「減税日本」が早くも存亡の危機に直面している。
6月6日に唯一のベテラン議員(3期目)で、会派の団長だった則竹勅仁氏が議員辞職。受け取り拒否を公約していた費用弁償(日額1万円)を密かに使用、政務調査費の不適切な処理も発覚したためだ。則竹氏は「庶民革命」を掲げる河村たかし名古屋市長の元秘書で、側近中の側近だった。期待を裏切る行為に市民から怒りや落胆の声が上がっている。
庶民の声を市政に反映させるとうたった「減税日本」は、これまでに政治経験のない新人ばかりを擁立し、最大会派へと躍進した。則竹氏の辞職によって、「減税日本」の市議はまさに全員(繰り上げ当選者を含め28人)が新人という状態だ。
だが、庶民感覚だけでは議員は務まらない。市政への熱意や思いをぶつけるだけでもダメだ。実際、市議選直後の3月議会(3月24日~4月27日)で、新人議員は厳しい洗礼を受けた。議員間の肌合いの違いも浮かび上がり、河村市長との距離感の違いなどから会派内に亀裂が生じた。
事態を憂慮した河村市長が年配議員を新設の「仲よし係」に任命、後任団長ともなって、修復に動いているが、元秘書の議員辞職により軋みは広がるばかりだ。会派は存亡の危機に直面している。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)