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人間を「使い捨て」にする原発へ志願、ベテラン技師たちのありがたさ

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第52回】 2011年6月29日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は日本の原発が人間を「使い捨て」にしてきたと海外でも報道される状況の中で、我こそはと志願するベテラン技術者たちの存在も世界で広く報道されていることが、いかに日本人としてありがたいかという話です。(gooニュース 加藤祐子)

結果的に大丈夫だっただけでは

 これを書いている最中、東京電力の株主総会が行われています。かつアメリカでは
河川氾濫で浸水した原発が無事かどうかが心配されています。そしてこれを書いている今、窓の開かない節電中のオフィス内はとても息苦しいです。ポスト原発事故の夏です。

 浸水したネブラスカ州のフォート・カルフーン原発について簡単に触れると、26日には、施設内部に水が流れ込んで電源が一時失われたため、非常用の電源が作動したとのこと。米紙『ニューヨーク・タイムズ』などによると、米原子力規制委員会(NRC)は発電機やポンプや制御装置などの「重要機器は乾いている」と安全性を強調しているそうです。使用済み燃料プールの高さまで水が達したという噂も否定。さらに、「厳密に言うと原発が今経験している事態は洪水ではなく「水の出来事、水による事態(a water event)」なのだとNRCは分類しているとか。……いわゆる「お役所言葉」は、実に万国共通です。

 ミズーリ川の水位上昇は東日本大震災に よる津波と違い、ゆっくりゆっくり進行していることもあり、原発側は水の到達に備えて土嚢を積み上げるなど備える余裕があったし、原発の所長はたとえ外部 電源が失われたとしても「インフラのすべてが失われたフクシマとはまったく違う状況だ」と安全性を強調しています。ただ、水位が今以上に上昇しないとして も下がる見通しはたたず、多数の小型排水ポンプを使っているため、ポンプ用の燃料補給がバケツリレー状態で続いているとも。

 フォート・カルフーンは4月7日から燃料棒の交換のため運転停止状態だったことも幸いしていますが、同じようにミズーリ川沿いにあり周辺が浸水しているクーパー原発は フル稼働中。どちらの原発も、施設の位置や増水の高さによって結果的に「フクシマとは違う」状況にあるようですが、なんだかそれって「結果的にラッキー だった」と言っているだけに聞こえます。川がもっといきなり、もっと激しく氾濫していたらどうだったのか、と。

 それでもアメリカにおける原発推進は、外国石油からの依存脱却と温暖化対策推進を掲げるオバマ政権の方針ですが、それだけに米メディアでは震災以来、「うちの国の原発は大丈夫なのか?」という報道をパラパラと目にします。

 たとえば5月7日付の『ニューヨーク・タイムズ』で見つけた「原子力機関は業界に近すぎると批判」という記事は、「また日本のことかな」と思ったらアメリカの話でした。老朽化が進むアメリカの原発104基について、NRCがさまざまな危険の指摘に目をつぶるかのように運転継続を許可してきた事例を詳しく挙げています。NRCはかねてから「善意ではあるが弱く屈しやすい。業界と密接すぎて、きっちり監督できない」と批判されてきたとも。NRCが求める安全対策は金や時間がかかりすぎると事業者が抗議すれば、腰砕けになってしまうし、NRCの関係者が原発業界の高給ポストにいわゆる天下りしていくというのも、日本と同じです。

日本人には危険だが外国人なら?

 もっとも、アメリカの原発業界にも問題があるからといって、東電や日本の規制当局が免責されるわけもなく。ロイター通信は「特別レポート」と銘打って、24日付で「日本の『使い捨て』原発作業員たち」という記事を配信しました。記事は1997年に福島第一原発3号機でおきた「安全性の危機(safety crisis)」の取り上げ、原子炉の隔壁(シュラウド)のひび修復作業において「もっとも危険な作業には外国人労働者を使ったと、当時のマネージャーは話している」と書いています。石川播磨重工業(現・IHI)で原発建設をずっと担当していた藤井カズノリさん(72歳、下のお名前の漢字が分かりません) はロイター通信に対して、「自分たちのやったことは日本の安全基準では許されなかったはずだ」と話しています(日本語の文言は私が英語から訳したものです)。

 シュラウド交換作業にアメリカやサウジアラビアや東南アジアの人たちを使っていたのは、記事によると「初めて明らかになった」ことだと。なぜ外国人を使ったかというと、日本人作業員には1日の上限放射線量が厳しく適用されていたからで、外国人を抜け道として使ったのだと。「日本人よりはるかに大量の放射線を東南アジアやサウジアラビアから来た作業員は浴びていた」と藤井さんはロイターに話しています。人種や国籍と放射線に対する耐性はまったく無関係だと思うので、なんだかめちゃくちゃな話です。記事によると、東電やIHI、また同じ工事に関わった東芝は、外国人作業員を使った記録はない、そういう事実は確認できないと答えているそうです。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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