国立健康・栄養研究所の調査によると、世帯収入が低い家庭は摂取エネルギーを専ら米やパンなど主食に頼り、野菜や果物、魚介類を食べないようだ。

 研究者らは、2011年度と12年度の国民健康栄養調査に回答した5475世帯、1万1015人(年齢20~79歳、男女比はほぼ1対1)の食事内容と世帯収入との関係を分析。食事の内容については全国300カ所の地域を無作為に抜き出して、11月のある日の献立を調査している。

 年間の世帯年収は、(1)低め(200万円未満)、(2)中間(200~600万円)、(3)高め(600万円以上)の3分類で自己申告してもらった。世帯年収のグループをみると、低所得層では、単身で年齢60~79歳のいわゆる「独居老人」が多いことが目につく。

 調査の結果、個人の1日の総摂取エネルギー量は中間層が最も多く、年収が低い層は最も少なかった。基準値の年収が高い世帯の平均摂取エネルギー量は1885キロカロリーだった。

 参考までに日本人の食事摂取基準では、50代の標準体形の日本人男性の必要エネルギー量は2100~2800キロカロリー、女性は1650~2200キロカロリーである(活動量で変動)。

 年収別に食事の内容を比較したところ、年収が低い世帯は「穀物」──ご飯やパンなど主食の摂取量が他の2集団より有意に多かった。その一方で、イモ類や豆類、野菜、果物、魚介など副食の摂取量は有意に少ないことが判明。研究者は「収入が低い世帯の成員は、専ら主食でおなかを満たしている」と指摘している。

 今回の調査は細かい栄養素の格差や影響には踏み込んでいないが、主食に多く含まれる糖質は、肥満や生活習慣病を引き起こすことが知られている。偏った食事は長い間に健康を損なってしまうのだ。

 低所得層の主食頼みは世界共通の現象だ。生鮮食品が高額であること、そして、ファストフードやコンビニ食など「便利・お手軽食」の普及の影響が大きい。

 世帯年収によらず、手っ取り早く「満腹だけ」を求める食習慣はいただけない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)