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警察の“突然の方針転換”に
ネットカフェ存亡の危機?

週刊ダイヤモンド編集部
2011年7月1日
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 「ネットカフェは風適法(旧風営法)対象業種になるのか」「営業するには飲食提供をやめるか、個室のドアを外すしかないのか」

 警察庁がネットカフェの個室営業は風適法の許可がない場合は違法との一部報道があった6月下旬以降、ネットカフェの業界団体である日本複合カフェ協会に経営者からの問い合わせが殺到した。

ネットカフェ産業の将来は警察の胸先三寸。Photo by Toshiaki Usami

 全国紙が報じたのは、警察庁はネットカフェが児童売春の温床になっているとして、5平方メートル以下の個室で飲食を提供する場合は都道府県公安委員会の許可が必要という風適法の網をかける方針を打ち出したというもの。

 すでに4月以降、この方針に基づいて大阪府警が2軒のネットカフェを摘発していた。これが警察庁の方針だとすれば全国で摘発が続発するのは必至だし、仮に風適法対象となれば、午前零時以降の深夜営業は認められず、ネットカフェは存亡の危機を迎える。風適法適用を逃れるために、飲食の提供をやめたり、個室のドアを外すせば顧客が離れていくのは目に見えている。経営者が疑心暗鬼に陥るのも当然のことだ。

 だが、警察庁のネットカフェへの風適法による取り締まりは今回が初めてではない。すでに2003年に名古屋で、家出少女が入り浸るネットカフェに愛知県警が風適法違反で家宅捜索に踏み込んでいる。さらに、2004年には警察庁が「区画席飲食業に係る解釈運用について」と題した通達を出している。

 これは、警察庁が、5平方メートル以下の個室を設けて飲食を提供し、なおかつその客席の見通しが悪い場合は、区画飲食店として風俗営業の許可を取らねばならないと定めたものだ。この規則はもともと、いわゆる同伴喫茶などを取り締まるためのもの。それをネットカフェの取り締まりに使うといういわば“無理筋”だ。

 ネットカフェへの風適法適用は古くて新しい問題であり、今回、突如として始まったことでは無いが、先の報道を受けてネットカフェ経営者が警察の方針転換による死活問題が起きたと受け止めるのも無理のないことだ。

 実は、前回の04年の風適法の適用方針から大きな変化があったわけではない。04年当時、警察は頻発するオークション詐欺やネット銀行の預金引き出しなどの舞台に使われるネットカフェに業を煮やし、通達を出した。ただし、当時の警察は前出の日本複合カフェ協会の存在を知らず、一方的に通達を出した後に初めて、協会と“話し合い”を持ったほどだった。

 元々、先の業界団体はネットカフェの前身である漫画喫茶やゲーム喫茶が、店で提供する漫画やゲームの著作権の使用許諾を得るために設立された団体だった。

 だが、漫画喫茶やゲーム喫茶がインターネットサービス提供や24時間営業、個室提供など、現在のネットカフェの業態に変わっていく中で、ネットカフェ経営者を束ねる業界団体に姿を変えた。

 そして業界団体としての性格を強めるにつれ、会員企業には顧客への会員制の導入と本人確認の徹底など、自主規制のかたちで警察の望む業界の“健全化”を進めることで、結果として風適法適用を回避する“沈静化”の道をたどってきた。

 今ではネットカフェは全国に約2800軒、市場規模は2250億円(数字は09年度)もの市場に成長した。ネットカフェを主軸に上場している企業も現在3社ある。

 だが、業界の自主規制には大きな抜け穴があった。というのも、こうした業界の自主規制を嫌った一部の業者は協会を脱退、あるいは当初から加盟せず、“健全化”とは逆の道をたどったのだ。

 繁華街に行けば、「本人確認不要」、「鍵付き完全個室」など、警察を“刺激”するサービス内容をうたう看板がたっている。彼らは自主規制を逆手にとって、協会加盟の客を奪いにかかったのだ。東京都では昨年7月から条例で本人確認が義務づけられたが、他の道府県ではしたい放題だ。しかも、協会非加盟の大手業者のなかには、グループ内にテレクラや個室ビデオ店などを擁する怪しげな企業もおり、業界内では目の上のたんこぶ的存在だ。

 もちろん、業界団体非加盟企業だけが問題を起こしているわけではなく、大阪で摘発された2件のうち1軒は協会加盟企業だ。

 いずれにせよ、“健全化”と逆行する企業の動きを含め、業界団体と警察は水面下で“話し合い”と調査を続けてきた。

 だが、関係者によれば、警察庁が昨年ネットカフェで起きたわいせつ事犯を全国の都道府県警に照会したところ20数件のものぼることが判明した。そこで警察が本腰を入れて、全国のネットカフェの再調査に乗り出したというわけだ。今年4月以降の警察の調査は、前回の通達のような書面による厳格なものではなく、口頭によるもので、再調査を開始した。

 それゆえ、各県警による“温度差”もあるようだ。再調査の進む大阪とは裏腹に、首都圏のネットカフェ経営者によれば、「東京でも埼玉でも、警察は本人確認を徹底しているかどうかの確認には来ているが、室内の見通しをよくしろとか、風適法を申請しろとかの指導は無い」として様子見の構えだ。だが、警察も全国に再調査を命じた以上、「大阪以外は問題なし」で終わるとも思えない。

 業界関係者の中には「この際、問題企業を徹底的に叩いてもらった後で、厳格な運用基準なり、業法を作るなりしてもらって、風適法対象になる“日陰”扱いの商売をまっとうに扱ってもらいたい」との声もある。一方で、飲食を提供しないため、風適法適用を逃れられる個室ビデオ店に衣替えする動きも水面下であるという。

 果たして警察がネットカフェを徹底的に取り締まって潰してしまうのか、ある程度の取り締まりで“沈静化”させることで産業として育成の方向に向かうのか。2000億円のネットカフェ産業の将来は警察の胸先三寸である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

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