米自動車市場、安売り合戦の激化で日系メーカーにも暗雲フォード最高経営責任者(CEO)を解任されたマーク・フィールズ氏は、かつてフォード傘下だったマツダで社長を務めた Photo:AP/アフロ

「米国での販売台数は昨年より落ちるかもしれない」。トヨタ自動車の米国法人トヨタモーターノースアメリカ上級副社長のボブ・カーター氏は今年4月、ある会合の場でそんな悲観的な見通しを述べたという。

 その言葉通り、米市場の失速が鮮明になっている。

 米調査会社オートデータが発表した4月の米新車販売台数は142万6126台で前年同月比4.7%減を記録。今年に入って4カ月連続の減少となった。

 米国の自動車販売台数は2009年以来増加を続け、リーマンショックで打撃を受けた世界経済をけん引した。ところが売れ筋のピックアップトラック市場が一巡し、需要の頭打ちが表面化している。

 そこで自動車メーカーは販売店に値引きの原資となるインセンティブ(販売奨励金)を支払い、在庫を何とか売りさばこうとしている。しかし、このインセンティブこそ、一度打てばやめられない“麻薬”のようなものだ。

 車を安売りすれば販売台数は維持できるが、販売費増加が収益を圧迫する。いったんインセンティブを上げてしまえば、それを下げることは難しい。販売促進の効果がなくなれば、さらにインセンティブを積み増さなければならない。ブランドの価値も毀損する。