少数精鋭のコンサルティングファームには、「Up or Out」(昇進するか、さもなくば去れ)という厳しい掟がある。しかし、それを以てして、単なる切り捨てやエリート選抜だけが行われていると決め付けるのは、言葉の独り歩きというものだろう。厳しい人事評価制度は手厚い社員教育と表裏一体だ。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のハンス-ポール・バークナーCEOに、リーダー育成の要諦を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
――米フォーチュン誌の2011年「働きたい企業」ランキングでSASに次いで第2位に選ばれた。高い評価を得た理由をどう考えるか。
(Hans-Paul Burkner)
国際的なコンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のプレジデントおよびCEO(最高経営責任者)。1981年に同社に入社し、ドイツのデュッセルドルフおよびフランクフルト・オフィスの開設メンバーとなる。BCGの金融プラクティスのグローバルリーダーを経て、2003年に同社最初のヨーロッパ出身CEOに就任。ドイツのルール大学で経済、経営、中国語を専攻し、その後イェール大学大学院を経て、オックスフォード大学で博士号を取得。オックスフォード大学にはロード奨学生として在籍した。現在はフランクフルトおよびニューヨークを拠点に、世界中のオフィスを定期的に訪問している。
どのビジネスも今や「人のビジネス」になっている。人口の変化や人材の獲得競争という環境の中では、企業内でどういった人事制度を用意し、社員の個人的成長につながるどのような機会を与えるかが、企業にとって最も重要な課題になっている。
ランキングに実際どのような尺度が用いられたのかは知らないが、私自身は社員が成長できる環境を与えることが一番大切だと考えている。もちろん、成長にはいくつかの側面がある。学習することがたくさんあり、スキルを上達させ、仕事の内容だけでなく、リーダーシップや人間関係を学べるようなおもしろい職場を提供するのは、そのひとつだ。また、ポジティブな意味で仕事が挑戦的で、昇進してどんどん責任を担うようになるのも、また成長である。
――社員が自分の成長を実感できるような仕組みはあるのか。
BCGでは、社員が持続的に評価される制度を導入している。この評価制度は、一番若いアソシエイトやアシスタントから、コンサルタントやCEOまで同じであり、社員はみな評価のフィードバックを受けながら前進することが求められている。パートナーになっても同じだ。どこまで昇進しても、「もう自分は何でも知っている」という傲慢な状態にはならない。
その昇進について言えば、社員は2~3年ごとに次へ進むようになっている。アソシエイトからコンサルタントへ、コンサルタントからプロジェクト・リーダーへ、そこからプリンシパル、パートナーへと上っていく。パートナー・グループは全員が(BCGの)共同経営者という仕組みになっている。そこからさらにシニア・パートナーへの道がある。そうやって、自分が前進していることが明確にわかるようになっている。
――BCGも、他の少数精鋭のアメリカ企業同様、人材育成に関して「Up or Out(昇進するか、さもなくば去れ)」という厳しい姿勢をとっていると聞くが、これは本当か。