平成22年の「国勢調査」(総務省)の詳細データを調べると、意外な働き方の素顔が見えてくる。特徴は、ここ数年、技能職の労働者数が増えていることだ(図表1参照)。人口減によって就業人口も細っていく中で、非正規化や新卒採用抑制によって、日本の勤労者のスキルが低下していくのではないかと危惧していたが、必ずしもそうではない。
データを確認すると、就業者の総数は1995年の6418万人がピークで、2010年は5829万人と減っている(ピーク比▲589万人減、▲9.2%減)。2010年の水準は1985年を下回っている。
職種別には、農林漁業、生産工程・労務作業者、管理的従事者、運輸・通信作業者が減少。反対に、専門的・技術的職業従事者、サービス職業従事者が年々増加している。
専門的・技術的職業従事者、すなわち技能労働の職業区分の内訳を見てみると、SE(システムエンジニア、情報処理技術者)、看護師、保育士など社会福祉専門職業従事者などの増加が目立つ。背景には、IT化と高齢化が進んでいることがある。医療・福祉に近接した分野では、医師、薬剤師、歯科衛生士がいる(図表2参照)。
ほかにも、弁護士、宗教家、デザイナー、栄養士、スポーツを個人教授する者、俳優・演芸家に教授する者も比率として急増している。「師」や「士」が付く仕事の増加は、単にIT化・高齢化を反映しているのではなく、働きたいと思う人々が「手に職をつけて食べている仕事」を得たいという動機があるのではないか。