長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第28回】 2016年7月14日 樋口直哉 [小説家・料理人]

病弱だった江崎グリコ創業者が97歳まで生きた秘訣

イラスト/びごーじょうじ

 日本のスーパーで売られているお菓子はおしなべて高品質である。メーカーが食べる人の健康にまで配慮していることもわが国ならでは、だ。例えばポッキーやプリッツなどのロングセラー商品で知られる江崎グリコの企業理念は「おいしさと健康」。創業者、江崎利一の精神が今も生きている。

 この会社を象徴する製品といえば栄養菓子「グリコ」である。佐賀県出身の江崎は、地元、有明の漁師が捨てていたカキの煮汁にグリコーゲンが含まれていることを発見。病弱だった自らの息子を試験体にし、試行錯誤の末に独自のキャラメルを完成させる。予防医学の重要性に気付いた江崎の狙いは嗜好品として栄養食品を売ることにあった。

 初めは苦戦を強いられるものの「1粒300メートル」というコピー、おまけにおもちゃを付けること、販売方法に自動販売機を採用するなどの創意工夫で、当時、森永製菓の1強だった市場を崩すことに成功し、人気を集めた。江崎はその後、酵母入りビスケットの「ビスコ」(現在は酵母ではなく乳酸菌)で子どもの栄養状態の改善に寄与した。

 幼い頃から腺病質で、医者から「一人前に育つかどうか疑わしい」とまで言われていた江崎は自身が長生きした理由をこんなふうに説明している。

「栄養のバランスをとるため、野菜はなるべくナマで五種類以上をとる。(中略)次によくかむこと。とうふでも牛乳でも念入りにかむ」

 かむことの重要性は今では常識になった。かむことは唾液を増やし、消化を助ける。満腹中枢を刺激し、肥満も防ぐことができるし、唾液に含まれるペルオキシダーゼは活性酸素を減少させ、がん予防にもつながる。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

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