突発性難聴が再発?
募る医療への不信感
「あれ、また聴こえない。嘘でしょ、再発しないんじゃなかったの」
文子さん(仮名・41歳)は独りごちた。
片耳に閉塞感がある。エレベーターで一気に高層階まで昇った際の、あの感覚。周囲の音が突然小さくなり、遠のいてしまったような聴こえの変化は、まさしく1ヵ月ほど前に体験したものと同じだった。
さらに説明すると、文子さんは「突発性難聴」と診断されて入院し、10日前に退院したばかりなのである。
突発性難聴は、年間3万~4万人が発症するといわれるポピュラーな病気。聴こえの神経である蝸牛の血流障害によるものだろうとする説が有力で、ほかに何らかのウイルスが原因という説もあるが、要するに原因はいまだに不明だ。
ただ、症状ははっきりしていて、ある日突然、片方の耳が聴こえにくくなる。しかも、いつ、どこで、何をしているときに症状が始まったのかを、具体的に答えられる患者が多い。それ以外では、文子さんのように耳が詰まったような感じのほか、耳鳴りやめまいを伴うケースもある。治療開始は早ければ早いほど治りがよく、発症から1ヵ月も放置すると、症状はほぼ固まってしまう。いったん治ってしまえば、再発することはない。
つまり、「突然」、「片耳」が、はっきりとわかるくらい「聴こえにくくなる」。治療開始は早いほど治りがよく、治った後は、「再発しない」病気、というのが定説だ。