旭化成で買収を酷評された「救命機器事業」が逆襲の急成長価格は高いが、高性能で壊れにくい米ゾール社の救命救急医療機器は米軍でも採用される。今後は、発展途上国でも展開する 写真提供:旭化成ゾールメディカル 拡大画像表示

 過去10年間の売上高の平均成長率が15%──。2017年3月期の決算が減収減益となった旭化成で、急成長を遂げている事業がある。

 旭化成本社のヘルスケア部門で、“心臓突然死(心臓の機能が突然停止して24時間以内に死に至ること)”の危機に直面した患者を救うための救命救急医療機器などを扱うクリティカルケア事業だ。

 この事業は、12年3月に旭化成が約1800億円を投じて買収した米ゾールメディカル社が担っている。17年3月期決算で、同社はのれん代(買収価格と純資産価値との差額)などの償却前の段階で250億円以上を稼ぎ出しており、100億円を超える償却を差し引いても約150億円の営業利益を計上している。同決算期における会社全体の営業利益が1592億円だったことを考えれば、その存在感は決して小さくない。

 ところが買収当時、この“孝行息子”の評判は悪かった。まず、約1800億円という買収価格がゾール社の業績と比べると割高だった。さらに、証券アナリストからは「なぜ、将来有望な再生医療ではなく、いまさら医療機器の販売なのか」などと酷評された。