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反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方
【第3回】 2017年6月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
ナシーム・ニコラス・タレブ,望月 衛,千葉敏生

測定すべきはリスクではなく「◯◯」。『反脆弱性』で明かされた今私たちに必要なもの

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リーマン・ショック、アラブの春、地震と津波、そして原発事故……。私たちは今、昨日までは「ありえない」と言われたことが、今日、現実のものとなる不確実な世界で生きることを強いられている。ではどうすれば、ランダムで、予測不能で、不透明で、物事を完璧に理解できない状況でも、不確実性を味方につけて、したたかに生き延びていくことができるのだろうか――。
サブプライムローンに端を発する金融危機を喝破し、ベストセラー『ブラック・スワン』で全世界に衝撃を与えた「知の巨人」タレブが、その「答え」を見つけた最高傑作『反脆弱性』から、「プロローグ」を順次公開していく連載第3回。リスクの測定や未来の予測を否定するタレブが提案する、真に測定すべきものとは?

頑健なだけじゃダメ

 母なる自然は“安全”なだけじゃない。破壊や置き換え、選択や改造を積極的に繰り返す。ランダムな事象に関していえば、「頑健」なだけでは足りない。長い目で見れば、ほんのちょっとでも脆弱なものはすべて、容赦ない時の洗礼を受けて、壊される。それでも、私たちの地球はまあ40億年くらいは生きている。とすれば、頑健さだけじゃない、何かがあると考えるのがふつうだ。

 小さな亀裂がシステム全体の崩壊につながらないためには、完璧なる頑健さが必要だ。だが完璧な頑健さなどありえないことを考えると、ランダムな事象、予測不能な衝撃、ストレス、変動性を敵に回すのではなく、味方につけ、自己再生しつづける仕組みが必要なのだ。

 反脆いものは、長い目で見れば予測ミスから利益を得る。この考えに従うなら、ランダム性から利益を得る多くのものが今日の世界を支配し、ランダム性から害をこうむるものはとっくになくなっているはずだ。実をいうと、それが正解だ。

 私たちは、世界がプログラムされた設計、大学の研究、お役所的な助成で成り立っていると思っている。でも、これが実は錯覚だという強力な証拠がある。私はその錯覚を「鳥に飛び方を教える」現象と呼んでいる。技術というのは、オタクが作った設計図を押し入れにしまいこみ、リスク・テイカーたちがいじくり回し(ティンカリング)(試行錯誤)という形で反脆さを開拓する結果として生まれるものなのだ。モノを生み出すのはエンジニアや試行錯誤する人たちなのに、歴史書を書くのは学者だ。私たちは、成長やイノベーションなど、色んなものの歴史的解釈を見直す必要があるだろう。

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ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)

文筆家、トレーダー、大学教授および研究者という三つの顔を持つ、現代の急進的な哲学者。生涯を通じて、運、不確実性、確率、知識の問題に身を捧げており、主な研究テーマは「不透明性のもとでの意思決定」、つまり人間にとって理解不能な世界で生きていくための地図やルールについて考えること。レバノンでギリシア正教の一家に生まれ、ウォートン・スクールでMBAを、パリ大学で博士号を取得。現在、ニューヨーク大学タンドン・スクール・オブ・エンジニアリングでリスク工学の教授を務める。著書『まぐれ』および『ブラック・スワン』(ともにダイヤモンド社)は33の言語で出版されたベストセラーである。

望月 衛(もちづき・まもる)

大和投資信託株式会社リスクマネジメント部。京都大学経済学部卒業、コロンビア大学ビジネススクール修了。CFA、CIIA。投資信託等のリスク管理やパフォーマンス評価に従事。訳書に『ヤバい経済学』『ヤバすぎる経済学』『その問題、経済学で解決できます。』『社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた』(以上、東洋経済新報社)、『ブラック・スワン』『まぐれ』『経済は「予想外のつながり」で動く』(以上、ダイヤモンド社)、『ヘッジホッグ』『ウォール街のイカロス』(ともに日本経済新聞出版社)等がある。

千葉敏生(ちば・としお)

翻訳家。1979年神奈川県生まれ。早稲田大学理工学部数理科学科卒業。訳書に『情報と秩序』『デザイン思考が世界を変える』『スイッチ!』『決定力!』(以上、早川書房)、『クリエイティブ・マインドセット』(日経BP社)、『ウソはバレる』(ダイヤモンド社)等がある。


反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

リーマン・ショック、アラブの春、地震と津波、そして原発事故……。
昨日までは「ありえない」「絶対ない」と言われた事象が今日、現実のものとなる不確実な世界。

ではどうすれば、ビジネスから、政治、医療、生活全般まで、ランダムで、予測不能で、不透明で、物事を完璧に理解できない状況でも、不確実性を味方につけ、したたかに生き延びていくことができるのだろう。

サブプライムローンに端を発する金融危機を喝破し、ベストセラー『ブラック・スワン』で全世界に衝撃を与えてから10年。
世界最高の哲人タレブがついに見つけた「答え」、それこそが、「反脆弱性(はんぜいじゃくせい)」だ。

ついに刊行された『反脆弱性』より、タレブの許可を得て「プロローグ」を抜粋して公開しよう。

「反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」

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