生鮮・日用品のネット販売が日本では絶望的な理由

流通業界ではしばしば「米国のトレンドは数年遅れで日本にも伝わる」といわれてきた。事実、ダイエーを創業した故中内功氏が持ち込んだセルフスタイルのスーパー、セブン&アイ・ホールディングス前会長の鈴木敏文氏が広めたコンビニエンスストアなどがそうだったし、米国で起きた基本的な流通の構造変化は日本に移植された。しかし、ネット時代になり、最近は米国の現象が必ずしも日本に伝わるとは限らなくなっている。「違う進化」を遂げようとしているように見えるのだ。(流通ジャーナリスト 森山真二)

アマゾンの
ホールフーズ買収の狙いは

 米国のアマゾン・ドット・コムは自然食品やオーガニックが得意分野の高級食品スーパー、ホールフーズ・マーケットを1兆5000億円で買収する。日本ではネット通販大手のアマゾンが高級食品スーパーで実店舗にも手を広げるなどと報道された。とはいえ、アマゾンは実店舗の運営にはあまり興味はないだろう。

 もちろん、アマゾンが実店舗で生鮮食品などを売り、それによって利益を上げるという試みも多少はあると見られるが、真の狙いは別のところにある。それはズバリ、生鮮食品の仕入れルートだ。さらに、ネットで注文を受けた商品をこの実店舗や、倉庫スタイルの拠点で受け取れるようにすることにあるのだ。

 米国では、ネットで注文して店舗に商品を取りに行くというスタイルが急速に広がり始めている。米アマゾンもネットで注文して、倉庫型の拠点に商品を受け取りに行く「アマゾン・フレッシュ・ピックアップ」の展開を開始している。

 今後、アマゾンは「アマゾンフレッシュ」の受け取り拠点を全米に1000ヵ所設置するプランを表明するなど、ネットで注文して受け取り拠点で引き取りという、ネットとリアルの融合に熱心だ。