東電福島原発事故の賠償を進めるための「原子力損害賠償機構法案」について、民主・自民・公明3党の修正合意が成立し、26日、修正案として衆議院東日本大震災復興特別委員会に提出され、民主、自民、公明などの賛成多数で可決された。28日の衆院本会議で可決され、参院での審議を経て8月上旬にも成立する見通しだ。

 どのように修正されたかの前に、政府案を見ておこう。政府案を一言で言えば、株主や銀行の責任を問わずに、電気料金値上げなどの形で国民が損害を負担するものだ。詳しくは、5月12日付けの本コラム(原発事故賠償金の国民負担を少なくし電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう)を見ていただくと分かるが、6月に公表された新しい東電決算の数字を使えば、政府案(プランA)は、法的整理(プランB)より、国民負担は5兆円ほど多くなる。

 また、法的整理(プランB)は、株主や債権者などはリスクに応じた責任をとるという意味で、すでにある市場のルールとして「フェア」である。それに比べて、政府案(プランA)は、すでにある「フェア」なルールを踏みにじり、無関係な国民に負担をしわ寄せする「アンフェア」なものだ。

アンフェアのものを押し付けるため
数多くの「デタラメ」が流された

 特にひどかったのは、アンフェアなものを押しつけるために、数多くの「デタラメ」が流されたことである。

 まず、法的整理すると被災者への救済ができないというものだ。そんな非常識なことが厳格な法的整理のなかで行われるはずがない。もし心配なら被災者への仮払いを行えばいい。実際、今国会では、野党から仮払い法案もでているので、そうした心配はない。

 次に、法的整理すると電力の安定供給に支障が出るともいわれた。しかし、JALの破綻処理で明らかなように、事業を継続しながら法的整理をすることは可能でもあり、それは常識でもある。