住むならここ!
それでも切り離せない通勤混雑事情

 そんな神奈川県民だが、多少の不満はあれ、どこであろうと自分の住むエリアに暮らしやすさ、住みやすさを感じている人が多いのも印象的だった。今回話を聞いた人たちは口をそろえて「住むなら川崎」「住むなら横浜」「住むなら平塚」と地元の良さを強調した。これも地元愛の強さの表れだろう。

 一方、地元愛が強いとはいえ、神奈川県民の多くは昼間は地元にいないことが多い、という興味深い側面もある。神奈川県は有名企業・進学校が集中する東京の近郊に位置することもあり、通勤や通学で県外に出ていく人口が多いと見られる。

 総務省統計局発表のランキングによれば、通勤・通学時間の長さは1日あたりの平均が1時間40分と日本一長く、さらに睡眠時間は7時間31分でこれは日本一短い。つまり、睡眠時間を削ってその分を通勤・通学時間に費やさざるを得ないとも想像できる。

 そうなると、勉強や仕事が終わった後に、神奈川県民が「わが地元」に戻って来るのも一苦労だ。

 前出の世田谷区在住の女性は、通勤事情をこう振り返った。

「新百合に住んでいた時代は、やっぱり大変でした。特に終電からタクシー乗り場へのダッシュ。新百合って、住宅地とはいっても、駅から歩ける範囲に暮らせる場所がほとんどない。遅くなるとみんなタクシーを使うから、ヘタしたら50分とか待つんです。楽しい飲み会の帰りでも、あのダッシュを想像するだけで酔いもさめました」

 湘南ライフを謳歌する人もラッシュを避けた住居選びをしたようだ。

「平塚からなら東海道線での通勤でも座れる。茅ヶ崎からは座れないので、やっぱり住むなら平塚がおすすめかな」(平塚市在住の男性)

 そして毎日東京に通っている彼らからはこんなコメントも。

「俺らはしょっちゅう東京に行ってるのに、東京の人はたまに来るだけで『横浜遠い』とか言うからイラッとくる」 

 首都圏に近いので通勤・通学に長い時間を費やすことはある程度我慢しなくてはならないだろう。それでも「地元はよそと違っていちばん良い」と言い切る彼らは、なんだかんだ「離れていること」も独自の文化を守る堤防として、ポジティブに捉えているような気がした。

(ライター/高橋有紀)