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China Report 中国は今

高速鉄道事故の陰に腐敗と安全軽視
“鉄道金脈”を食い物にした男と女

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第80回】 2011年7月29日
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 中国鉄道部が重視していたのはおよそ「人命、安全」などではなく、己の懐の肥やし方であることを物語るエピソードがある。鉄道部の予算をほしいままにし、巨万の富を築いた男と女がいるのだ。

 筆者は上海で、ある人物を紹介してもらう手はずになっていた。その人物とは中国でも有数の「セレブ」で、まるで絵に描いたかのような中国成功物語の主人公だった。友人Wは今度一緒に食事をしようと言い、筆者も彼女との対面に興味津々だった。

成金ルックで決めた
“石炭おばさん”の立志伝

 彼女の名前は丁書苗。山西省出身の56歳だ。ルイヴィトンのモノグラムのハンドバック大中小を大きい順に腕からぶら下げ、腕にはダイヤの時計、首にはエルメスのスカーフを巻き付けと、まさに「そのまんま」。典型的な“成金好み”が彼女の定番だ。

 今でこそギンギラの成金だが、彼女の“改革開放の歴史”は70年代の「村のタマゴ売り」から始まった。80年代はトラックや貨車からこぼれ落ちた石炭を拾い生計を立て、そこから石炭運輸業へと乗り出す。2000年には共産党中央のお膝元・北京に進出し、手広く、そして深く“中央”に食い込むようにしてその事業を展開した。

 真っ黒になった山西省の幹線道路で、そのこぼれた石炭を拾い集める姿は想像するに難くない。私と友人Wは彼女を勝手に “石炭おばさん”と呼んでいた。

 友人Wはさらに丁書苗をこう描写する。

 「とにかく、やることなすことブッ飛んでる。バッグにはいつも現金がびっしり。50万元(約600万円、1元=約12元として)ぐらいは入ってるの。四川大地震では1億元超を寄付したことで有名になった。女性の生理用ナプキンも現地に送ったわ、十両編成の車両にびっしりナプキンを積載してね」

 「気に入った人には大盤振る舞いって感じで、『今度、マンションあげる』なんて平気で言うのよ。自分で開発したホテルもある。その豪華さにはもう圧倒されちゃった。そこで牛乳風呂に入れてもらったり、中国の名うての女優が集まるサウナに入ったりした。でも、客室内がとても熱いのが玉に瑕だったわね、やっぱり石炭焚きすぎなのかしら」

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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