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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

空白掲載、批判後削除も…
高速鉄道事故“報道管制”に抗う
中国メディアのあの手この手

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第64回】 2011年8月4日
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 中国版新幹線である高速鉄道の衝突事故に関する中国メディアの報道に異変が起きた。

 ほとんどのメディアで新華社通信の配信ニュース、つまり政府の認めた情報しか報道できなくなった。明らかに中国共産党中央委員会宣伝部(以下は中宣部と略す)の報道規制によるものだと思う。

 中宣部のこの禁止令で、多くのメディアが仕方なくすでに編集済みの紙面を撤回したが、なかには、記事が撤回されたところを空白のままで発行した新聞もあった。抗議の意思を表示するためだ。ネット上でも多くの書き込みが削除された。一部の記者もその報道姿勢で処分を受けたという。

 香港記者協会は、7月30日に、高速鉄道の追尾衝突事故の報道を禁じる禁止令を撤回するよう中宣部に対し声明文を出した。その声明によれば、中宣部の禁止令でやむを得ず編集済みの紙面を撤回したメディアには、「21世紀経済導報」、「財経週報」、「中国経営報」、「新京報」、浙江省の「銭江晩報」、西安の「華商報」」などがあるという。政府系のメディアの重鎮である新華社通信も配信した記事の一部を取り消す緊急通知を出さざるを得なくなった。

 こうした時代の流れに逆行する動きは、時代が変わったことにあまりにも鈍感なのが鉄道部だけではないことを物語っている。インターネット時代を迎え、すでに10年以上経った今の中国では、知る権利などに対する国民の意識が向上し、その意識を表現する手段も増えている。

 まず、インターネットと携帯電話のユーザー数を見てみよう。2010年末の時点で前者は4億5700万人で、後者は9億2000万人にのぼっている。そのうち、常時、携帯電話を利用してインターネットを利用しているユーザーも3億300万人もいる。手軽にリアルタイムに利用できる中国版ツイッター「微博」も急速に利用者を増やしている。現在、利用者数はすでに1億9500万人に達しているが、その数はまだ猛烈な勢いで増え続けている。

 情報通信技術がここまで発達した社会で、政府の都合で事実を曲げた報道規制を行うことは明らかに時代の変化をまったく理解していないとしか言いようがない。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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