100年の常識を覆したアルファ碁

アルファ碁は黒1のような、盤端から数えて3・3の地点に打つ「三々入り」を多用する 拡大画像表示

 アルファ碁の手を通じて、AIがたどり着いた“思考法”を探ってみよう。

 アルファ碁の自己対戦では、左図の黒1で示したような「三々入り」(盤端から数えて3・3の地点)と呼ばれる手が多用されている。

 この三々入りは人間の常識では中盤戦で打つ手であり、このように序盤早々打つのは「悪手」とされ、絶対に打つことはなかった一手である。

 なぜか。

 ここから、8手進めた局面で説明しよう。

 人間の定石では、三々入りの後はこのような進行になり、▲印はほぼ黒地となる。黒が得た実利は10目弱だ。それに引き換え、白は厚みを得た。これは10目以上の価値があるため「白有利」というのが、人間が100年以上積み重ねた囲碁の常識だった。

黒1で「三々入り」した後の一般的な定石の進行。黒は△印の10目弱の陣地を得ることができ、白は白2〜白8の壁の厚みができる 拡大画像表示

 しかしアルファ碁は、平然と黒1と三々に打ち、白に厚みを作らせてしまう。人間の考えでは、黒が得た実利は10目弱で限定的なのに対し、白の厚みは、働きが悪ければゼロに近いが、良い場合は50目以上にもなってしまうリスクがある。

 序盤であればあるほど、厚み(=将来への投資)の働きを正確に測るのは難しい。そのため、リスクを避けて序盤早々の三々入りを人間は打たなかった。しかし、アルファ碁は、多くの対局でこの三々入りを打つ。白の厚みが、黒の得た10目弱以上には働かないと判断しているのだろうか。