世界的な金融市場の混乱を収束できない
“政治”のリーダーシップに募る不安

 8月5日、有力格付け会社であるS&Pが米国債の格付けを引き下げたことをきっかけに、世界的に株式や為替などの金融市場が大きく振れている。

 欧米やアジア諸国の株式市場は、いずれも大口の売りに押されて下値模索の状況だ。一方、為替市場では、信用不安の出ているドルやユーロが売られやすくなっており、安全通貨と言われる円やスイスフランに多額の資金が流入している。

 こうした状況が続くようだと、実体経済にマイナスの影響が及ぶことは避けられない。景気の先行きに赤信号が灯ると、景気急減速→金融市場の混乱という“負の連鎖”が鮮明化する懸念が高まる。

 欧米など主要国の政治がうまく対応策を打ち出せればよいが、それができないと、今後、さらに事態は深刻になる可能性が高い。市場関係者の中には、「政治の対応がまずいと、1930年代の大恐慌の二の舞になることも考えられる」との悲観的な見方も出ている。

 今回の混乱のきっかけとなった米国債の格付け引き下げの背景には、米国の債務残高の増加に伴う、政府の債務削減の実現性やその規模に懸念があった。しかし、最大の問題は、米国内の政治的な混乱と見るべきだ。オバマ政権と共和党、ティーパーティーとの対立が、今回の混乱の大元にあることを忘れてはならない。

 一方、EUのソブリンリスクの高まりも、ドイツがギリシャなどに対する救済を渋ったことから派生している。ドイツの世論が救済に否定的だったのだが、それを政治のリーダーシップにより世論を導くことが出来なかったのである。

 つまり、世界経済が抱える問題の解決策ははっきりしているのだが、政治の機能が低下しているため、世論をそうした方向に結集できないのである。

 こうした状況を考えると、政治が足もとの問題を解決できるか否か不安になる。ということは、今後世界経済はさらに大きな問題を抱える可能性が高いことになる。その覚悟をしておいた方がよさそうだ。

 現在、世界経済が抱える最大の不安要素は、混乱した事態を収束できない“政治”だろう。特に、世界の覇権国である米国とEUの盟主であるドイツにおいて、政治のリーダーシップ機能が懸念される。