いまメディアで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。

自分の人生に満足していれば、偉そうにする必要がない

 謙虚であること――。
 これは、生きていくうえで非常に大事なことだと思います。

 私は、事業家としてそれなりの成功を収め、マレーシア国王から民間人として最高位である「タンスリ」という称号も授けられました。しかし、立場が変わっても、態度が変わってはいけない。そう自分に言い聞かせてきました。なぜなら、それはとても危険なことだと思うからです。

 かつて、私と同じときに「ダトー」という称号を与えられた友人がいたのですが、彼は受勲した途端に態度を変えました。地位の高い人物と一緒にいるときは慇懃に振舞うのですが、遠目に見ていると、他の人々に対しては威張っていた。威圧的な態度を隠さなかったのです。

 その姿を見て、私はひどく失望しました。なぜなら、彼に自信がない証拠を目の当たりにしたような気がしたからです。誰かに対して偉そうに振舞うことで、自分の優位性を保とうとしているのではないか、自分のなかの欠落を補おうとしているのではないか、という気がしたのです。

 私は、そんな生き方はしたくない。そもそも、自分が満足する生き方をしていれば、わざわざ誰かに偉そうにする必要などありません。これは、自分自身の心の問題だと思うのです。ただ、人間は弱い。立場が上がれば、どうしても慢心が生まれやすい。だから、私はローマ時代の政治家であり哲学者であるキケロの言葉を座右の銘にしています。

「地位ますます高くして、いよいよ謙虚にならねばならぬ」

 非常に有名な言葉で、誰でも知っているためにかえって軽視されている言葉かもしれません。しかし、2000年間ずっと伝えられてきた言葉には真理がこめられていると思います。だから、この言葉をひたすら徹底しようとしてきたのです。