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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

ここにもあった!住民投票で白黒つけるべきこと
沼津市を二分する大激論“鉄道高架事業”の是非

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第31回】 2011年8月18日
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 「貨物駅の移転先候補9ヵ所を検討したというが、原地区以外の8ヵ所はどこですか」

 最初の質問者がいきなり痛いところをズバッと突いた。静岡県沼津市で8月7日に開かれた住民説明会でのことだ。会を主催したのは静岡県で、「沼津駅付近鉄道高架事業に関する有識者会議」がまとめた報告書について住民に説明するものだった。日曜夜6時の開会にもかかわらず、大勢の住民が会場に詰め掛けた。

 静岡県の担当者が資料を1時間ほど読み上げた後、質疑応答に移った。その冒頭から鋭い質問が飛び出したのだ。想定外の質問だったのか、担当者は一瞬困った表情を見せた。

 そして、どぎまぎしながら説明を始めたが、肝心の地名にはいっさい言及しなかった。誤魔化そうという姿勢が見え見えだった。質問者が強い調子で再度、具体的な地名を問うと、県の担当者は驚きの回答を示した。

 「それはプライバシーに関することなので、今、この場でお示ししない方がよいと判断します。どうしても必要ならば、情報開示請求の手続きを取って下さい」

 木で鼻を括ったような態度に会場内の雰囲気が一変した。「本当に検討したのか!」といったヤジが飛び交い、騒がしくなった。担当者は渋々、検討したという原地区以外の貨物駅移転先候補地のおおよその地点を地図画面に光をあてて指し示した。しかし、曖昧でよく分らなかった。

 人口20万人ほどの沼津市が巨大公共事業の是非をめぐり混迷している。市を二分する対立がいつ果てるともなく続いている。紛争の種は、関連事業を含めると総事業費が2000億円近くにのぼる沼津駅の鉄道高架事業である。約4半世紀前の1985年に計画されたもので、以来、昭和が去って、バブル経済が崩壊し、世紀が変わって10年以上たった今もなお推進反対両派の激しい対立が続いている。なぜ、沼津の地域紛争がかくも長期化しているのか。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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