内閣府から、「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期財政試算)が公表された。だが財政健全化シナリオの前提になる成長率や税収の見積もりは現実離れしたもので、「いつまで、こんなフィクションを繰り返すのだろうか」というのが正直な感想である。
過大な税収見積もり
それでも「2020年度黒字化」は不可能
安倍政権が定める財政目標である、「2020年度基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」は、首相自身がG7サミットの場などでコミットしている。
つまり国債発行は、国債の償還や利払い費の範囲に抑え、社会保障や防衛費といった政策的な経費は税収で賄えるよう収支を黒字化することは国際公約となっている。
中長期財政試算は、その目標に向けての進捗状況を示すもので、達成に向けての経済政策・財政政策を経済財政諮問会議で議論するために内閣府が作成したものである。
だがその前提となる経済成長率は「実質2%以上、名目3%以上」(経済再生シナリオのケース)と楽観的過ぎる内容で、これを前提に計算した税収(歳入)も過大見積もりとなり、プライマリー黒字に必要な所要金額は過小見積もりになっている。
これまで2回先送りした消費税率10%への引き上げは2019年10月には実施することにもなっているが、それでも2020年度のプライマリー黒字には、なお8.2兆円不足するという試算だ。
これで国際公約の達成は不可能ということが明確になった。