古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第8回は、8月1日の慣習についてお届けいたします。(作家 徳力龍之介)

8月1日は「祇園の八朔」

撮影/福森クニヒロ

  祇園町では当たり前のように日常的に行われていることが、外の世界では「はてな」ということが多くあります。例えば「八朔」といわれる行事というか、慣習というか、8月1日を指す言葉がそのまま行事の名前になって行われているものがあります。

 芸妓、舞妓衆が挨拶回りをするのですが、8月に入ったばかりの夏真っ盛り、ひときわ暑い時期に正装の黒の絽の紋付を纏って祇園町中を駆け巡ります。祇園甲部の舞、井上流お家元のお家をまずは最初に訪れ、その後は技芸のお師匠さん宅、お茶屋さん料理屋さんと普段からお世話になっているところに順にご挨拶に回ります。

 夏のこの時期なのに、挨拶の口上は「おめでとうさん」です。「相変わりませずおたの申します」と挨拶を交わします。小さな町のコミュニティーですから、日頃から何かとお世話になったり、世話をしたりと持ちつ持たれつの関係なのでしょうが、気持ちのやり取りが表れるとても大切な慣習なのです。