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どのように「I-Prize」を立ち上げたか
シスコシステムズ:クラウドソーシングの試み

Inside Cisco's Search for the Next Big Idea

グイード・ジュレ
2011年9月7日
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インターネットを介して世界じゅうの人たちからアイデアを集める「クラウドソーシング」に注目する企業は多い。ただし、これで驚くようなイノベーションが実現し、しかもR&D費も下げられると考えているならば、それは大間違いである。

シスコシステムズは2007年、クラウドソーシングによるイノベーション・コンテスト「I-Prize」を立ち上げた。その経験によれば、潜在的な価値を秘めたアイデアを見つけるには、やはり相当の時間とエネルギー、忍耐力や想像力が必要になるという。I-Prizeの責任者が、アイデアの募集から最優秀賞の決定まで、クラウドソーシングの全プロセスにわたって、注意点や勘所について語る。

「I-Prize」計画

 シスコシステムズは2007年秋、「I-Prize」という、イノベーションの公開コンテストの実施を発表した。

グイード・ジュレ
Guido Jouret
シスコシステムズで、将来的な大規模事業の開発を担当するエマージング・テクノロジーズ・グループのCTO(最高技術責任者)を務める。

 その目的は、10億ドル規模の新規事業を生み出すアイデアを発掘するためである。その基準として、シスコの戦略と合致しており、かつインターネット技術の市場リーダーという当社のポジションを大いに活用しうるものという条件を設けた。

 より広い世界に目を向けることで、それまで見落としていたアイデアを見つけ、その過程で、技術や市場、そして我々自身について、自己中心的な視点を打破できると考えたのである。

 最終的に、世界104カ国から2500人以上の応募があり、約1200件のユニークなアイデアが寄せられた。選考と評価のプロセスは苦労の連続だったが、最優秀賞には、センサーを利用したスマートグリッド(ITを活用して、供給者と消費者の間の送電に関する課題を解決すること)のアイデアが選ばれた。

 長期的視野を見据えたこの計画は、たしかにチャレンジングとはいえ、我々の戦略とコンピテンシーにまさしく適したものだった。

 我々にすれば、クラウドソーシング(注)は初めての経験ではなかった。その数年前からイノベーションの社内コンテストを実施しており、その対象を社外に広げるのは自然な成り行きであった。くわえて、シスコが新しい技術を外部から採用するのも初めてではなかった。また、新興企業に投資したり買収したりしてきた実績もある。

 とはいえ、すでに開発されている有望技術を買い取るのと、まっさらなアイデアを調べるのとではまったく要領が異なる。評価プロセスは、我々が予想した以上に労働集約的で、瓦礫のなかから宝石を見つけ出すには、相当な時間とエネルギー、そして忍耐力と想像力を傾ける必要があった。

 もしイノベーションを安く上げようというつもりならば、その考えを改めるべきである。実際、I-Prizeのコンテストは、コスト削減の1環としてクラウドソーシング(注)を利用し、無料で知的財産をわがものにしようといった目的ではない。

 我々は、シスコにとって有益かつ長期的な投資先として、破天荒なイノベーションを探しており、発案者には25万ドルの賞金を進呈している。

 以下で、その具体的な内容についてご説明したい。

【注】
製品やサービスなどの開発において、インターネット上で不特定多数の人々を募り、その作業を委託すること。

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