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今週のキーワード 真壁昭夫

金価格の高騰が暗示する「世界通貨制度の崩壊」
政治はスタグフレーションの脅威を払拭できるか

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第190回】 2011年8月30日
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金の価格が上昇しているのではない
ドルの価値が著しく下落しているのだ

 「金の価格が上昇しているのではない。通貨、特にドルの価値が下落しているのだ」

 これは、あるヘッジファンド関係者の言葉だが、そこには一端の真理が含まれている。

 金は、はるか昔から東西を問わず、誰でも手に入れたいものである。誰でも欲しがるということは、その価値が極めて安定していることを意味する。かつて、金本位制の時期、発行されるおカネ=通貨の価値を裏打ちするために、通貨は金との交換が保障されていた。金といつでも交換できるため、その価値が安定していたのである。

 今から40年前の1971年8月15日、米国のニクソン大統領は、ドル紙幣の金との交換を停止した。それが“ニクソンショック”だ。それ以降、世界の通貨の中心である基軸通貨=米ドルは金の裏付けを失って、米国に対する信用力だけが頼りになった。つまり、ドルが金から離れて、1人で歩くようになったのである。

 一方、金の価格は、通常ドルで表示されている。ドルの価値が下落すると、金の価値が変わらないとすると、当然、ドル表示の価格は上がることになる。最近、起きている金価格の上昇は、ドルの価値下落の裏返しとも言える。

 その金が、足もとで一段と騰勢を強めている。今から約2年前の2009年8月後半、ニューヨークの取引所の金価格は1オンス(31.10グラム)が1000ドル程度だった。その金価格は、すでに1800ドルを超え、一時1900ドルを超える局面のあったほどだ。

 その背景には、世界の人々がドルに対する信認を失い始めているため、ドルを売って金に乗り換える動きが鮮明化していることがある。そうした状況が続くと、今後、基軸通貨であるドルを中心とした世界の通貨の仕組みが、根本から崩壊する可能性も出てくる。その可能性を、過小評価すべきではない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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