公開前から「反日映画」として話題になっていた韓国映画『軍艦島』が封切りになった。公開初日の7月26日には、過去最高のオープニングスコアである97万人を記録し、その後も2週間ほどで観客動員数は600万人を超えている(KOFIC調べ)。菅義偉内閣官房長官が記者会見で「この作品は事実を記録したものではなく、創作映画だと認識している」と見解を述べるなど、何かと注目の集まるこの映画は、日韓関係にどのような影響を及ぼすのだろうか? 最新刊『頼るな、備えよ――論戦2017』が発売された櫻井よしこ氏が語った。

反日映画を見て「初めて事実を知った…」
とネットでつぶやく韓国の若者たち

新作の反日映画「軍艦島」が大ヒット…日本糾弾の包囲網を張り巡らす韓国櫻井 よしこ
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」記者、同東京支局長、日本テレビ・ニュースキャスターを経て、現在はフリー・ジャーナリスト。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞。1998年、『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。2007年、「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。著書に『頼るな、備えよ―論戦2017』(ダイヤモンド社)など多数。

2017年6月15日、映画監督、柳昇完(リュ スンワン)氏がソウルで記者会見を開いて映画「軍艦島」の完成を報告した。7月26日封切りとなった同作品の内容は、かねてから日本側が懸念していたように、強い反日要素満載だ。

じつは、韓国国内でのこうした熾烈な反日歴史戦は、前・朴槿恵政権のときから続いている。彼らは2015年12月の日韓合意を反故にするために、ひどい映画を製作したのだ。インターネット配信の「言論テレビ」の番組で、拓殖大学教授の呉善花(オ ソンファ)氏が説明した。

「『鬼郷』という映画です。慰安婦問題がテーマです。13歳の女児を日本軍が無理やり連れ去る。連行先には同じように12歳、13歳の女児が多数閉じ込められていて、皆、毎日多くの日本兵の相手をさせられる。そうした場面を生々しく描写しているのです。結局、少女たちは故郷には戻れず、鬼あるいは霊になってさまよっている。『鬼郷』という題名には、鬼の形ででもいいから戻ってきてほしいという願望が込められています」

呉氏が説明した映画の筋書きでは、少女たちはひどい環境の下で次々と病気になり、命を落とす。日本軍は少女たちの遺体を穴を掘って放り投げ、石油をかけて焼き、埋めてしまうというのだ。

ばかばかしいまでに史実と懸け離れたこのような映画が、韓国ではなんと大ヒットしたのだという。呉氏がさらに語った。

「ソウル市長の朴元淳(パク ウォンスン)氏は、この映画こそ、小学生からお年寄りまで必見だと言って、老人ホームなどからバスを仕立ててお年寄りを映画館に連れていっているのです。映画館が足りないと言って、公共のホールまで使用しています」

日韓併合時の歴史、日本による統治の実態について少しでもまともに学んでいれば、「鬼郷」に描かれたような事実はあり得ないとわかるはずだ。しかし、韓国ではまともな歴史教育はまったくなされず、歪曲した歴史が教えられてきた。その結果はネットに正直に表れている。「初めて事実を知った」「こんな酷い仕打ちを日本がしていたことを、初めて知った」「心の底からの怒りに震えた」などと、涙ながらに発信する人々が後を絶たないという。