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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第17回】 2011年9月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

震災から6ヵ月が経過したいま
構築すべきは多様性のある社会

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「それはぜひ作るべきだ。でも私のところだけはやめてほしい」

 東北の被災地の方々に対しては、いまなお日本中の人が心を痛めています。

 しかし、そこには原発という複雑でやっかいな問題が影を落としています。被災地で農作物を作って出荷しようとする人に対して、批判的な意見が出されるということも起こっています。原発のせいで、「被災地の復興を支援しよう」という単純なストーリーを描けなくなっているのが悩ましいところです。

 8月27日、菅首相が福島県の佐藤知事のもとを訪れました。

 目的は、放射性物質で汚染されたがれきや土壌を管理する中間貯蔵施設を福島県に作ってほしいという申し入れをするためでした。

 佐藤知事をはじめ福島県民はもちろん反対を表明しますが、これは当然の反応です。菅首相がこんな話を持ち込んだ背景には、福島県以外の自治体が汚染されたがれきや土壌の受け入れを拒否することが多いからだと考えられます。

 少し前に話題となった、京都の大文字焼で焼く薪の問題も根は同じでしょう。

 被災地以外の人たちには、被災者に対して同情していても「放射性物質で汚染されたものを、自分の住む場所に持ち込まれたくない」という思いがあります。自ら、ぜひウチの県に持って来てくださいという人はあまりいないかもしれません。

 多くの人が、震災以降「みんなで手を取り合って」と口にしました。けれども、そこには「自分が痛まなければ」という前置きが見え隠れします。

 だからと言って、私はこの考え方を否定しているのではありません。

 自分や家族の身を危険にさらすことを避けたいと思うのは、ごく自然な考えです。

 欧米では、これをNIMBY(Not In My Back Yard)と呼んでいます。「それは社会にとって必要だが、私の住んでいる地域だけは困る」という態度です。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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