これまで企業変革を促す人材マネジメントや職場管理のあり方について、5回にわたって執筆してきた。今回で私のコラムも最終回となる。そこでもう一度、人を起点として企業変革を導く「人材マネジメント型企業変革リーダー」のリーダーシップについて考えてみよう。

企業変革をリードする
リーダーの具体的な行動とは何か

 企業変革とは、言い換えればビジネス・システムの改革である。ビジネス・システムとは、①組織の分業・調整の枠組みとインセンティブの仕組みである内部組織管理システム(組織設計、人的資源管理、生産管理、管理会計等)、②他社との分業を促進・制御する取引と利益分配の仕組みである組織間関係システム(マーケティング、流通システム、サプライチェーン、技術、製品開発等)、③経営者のモニタリングと規律づけ、及び企業価値分析の仕組みである企業統治システム(経営戦略、財務会計、ファイナンス等)、以上の3つの個別システムが連結したトータル・システムである。

 そして、人材マネジメント型企業変革リーダーが、ビジネス・システム改革の過程で働きかける人材は3種類のタイプに分けることができる。個々のサブシステムの変革を主導する「高度専門人材」。変革したシステムを愚直に遂行し組織に根づかせる「現場人材」。さらに内部組織管理、組織間関係、企業統治の3つのシステムの補完的連結を再構築する「経営人材」である。

 人材マネジメント型企業変革リーダーとは、図のようにこれら3タイプの人材の人間行動と人材価値に直接的・間接的に働きかけるリーダーである。問題はその具体的なリーダー行動とは何かということである。

学習性無力感を打破し<br />自己効力感を高める「制度的リーダーシップ」<br />―ローソンの改革に見る従業員の元気の回復―<br />神戸大学大学院経営学研究科教授 平野光俊